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第3回 「穢多非人」=「二級市民」とは
①<穢多非人>
 (財)東京都人権啓発センターが発行している、<人権プラザ便り[結い]> に、「ツイッターにおける差別書き込みを指弾するも…」との見出しのもと、以下のような内容の「人権相談」が載っている。

 40才代の男性Yさんが
去る4月17日、昨今流行中のネットサービスのツイッターにて、「インターネットメディアでは影響力のある」Tという男による「ソーシャルネットワーク見て、今や、コードが書けない奴はネット企業じゃ、穢多非人なんだな、と思った感覚と近いことが話されている」との差別書き込みを見つけ、「差別的かつ非常識な書き込みでしたので、私を含む何人かが、そのことを指摘したものの直されぬまま時が経過。腹立たしく思った私が画像化し、ある人権団体に送付しました。そのことを指摘すると、『先ほど、不適切な発言があったようなので、ご指摘に基づき、言い換えました』……。しかし、それは『穢多非人』を『二級市民』と言い換えるという、新たな差別書き込みだった」。「ネットメディアの将来を危惧する一人として、彼に問題の文章を削除し、不快な書き込みをしたことを公に謝罪するよう求めましたが、改善されません」。そこで、Yさんは、直接Tが所属する会社に連絡して抗議するも、「まったく誠意が見られぬ対応に疲弊するばかりでした」といいます。ツイッター上では、「余計なことをするな、お前が差別主義者だ」「お前のような人間の行動が差別意識を拡大する」「寝た子を起こすな」等と誹謗中傷の言葉を浴びせられ、Yさん自身が精神的に疲れてしまう状況にあり、とても気がかりです。
とある。

 インターネットで調べたところ、このTは田端信太郎という人物で、リクルートを振り出しに、ライブドアの執行役員などを務め、現在、アメリカのファッション誌関係の出版社・コンデナストデジタル(Conde Nast Digital)日本支社の、カントリーマネージャーということらしい。Yさんは、英文で、アメリカ本社に抗議文を送付しているが、誠意がないと引用文の中でもふれている。今どきあまり見かけない差別表現だが、(インターネット上ではそうでもないが)これが単に私的なツイッターではなく「ソーシャルメディアマーケティング」の道具として、宣伝目的で利用していた点で、より重大な問題と言わざるを得ない。

「穢多・非人」という言葉が差別語だからという理由で、「士農工商○○」という婉曲的な差別表現事例が、1980年代〜2000年にかけて頻発したが、これは「コードが書けない奴」を直接「穢多・非人」と同じだと、比喩的に表現した、度し難い差別表現と言わざるを得ない。

 しかも、問題点を指摘されたものの居直り、Yさんが“ある人権団体”に連絡をとったことを知るに到り、しぶしぶ言い換えた言葉が『二級市民』とは、何をかいわんやだ。

 Yさんの抗議と、差別表現問題に取り組む姿勢に敬意を表するとともに、外資系ではめずらしく、差別・人権問題に鈍感なコンデナストデジタル社の動向を注視したい。

 Yさんの抗議文の全文は下記の通り。
 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1161213651

②<ガラパゴス>
 6月29日、東京電力福島第一原発事故に対する経団連の対応に不満を持ち、退会を表明していた楽天の三木谷浩治社長が、記者会見で経団連を批判する流れの中で次のように述べている。
「ガラパゴス日本と言われているが、電力政策だけでなく、コーポレート・ガバナンスや会計制度などを国際的な基準に合わせていかないと、この国は食べていけない。それとは方向性が違うと感じた」
 否定的な意味で、「○○は日本のチベット」とか、「日本の携帯業界はガラパゴス化している」といった表現の一つで、当事者である「チベット」や「ガラパゴス」で暮らす人々の生活と感情を無視ないし、軽視した失礼な発言と言わざるを得ない。

 一体誰が「ガラパゴス日本」と言っているのか、もしこれが事実なら、三木谷氏はまずもって、そう発言している人なり組織に、その意味するところの差別性を論難すべきであろう。経団連の旧態依然とした体質を批判するのは良いが、例えを誤ると説得力も鈍る。(詳しくは『差別語・不快語』149〜150頁参照)
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