最新連載記事
カテゴリー
月別

記事検索
<< 第104回 差別語をカットして報道したテレビ局―政治家の“失言”報道を考える | 最新 | 第106回 在特会の街宣は「人種差別」――京都朝鮮学校ヘイト街宣への画期的判決 >>
第105回 各国に蔓延する排外主義――アウシュビッツからの生還者バーゲン・ソール氏のインタビューを読む
 

■勢力を拡大しているネオナチ政党

 ドイツのネオナチ政党「ドイツ国家民主党」(NPD)が、旧東ドイツ地域で勢力を拡大しているという。すでに旧東ドイツのザクセン州など2つの州議会に議席を獲得している。とくに農村部では、得票率以上に支持を得ているという。

 日本の在特会に劣らず、NPDも移住労働者に対する排外主義的な行動を活動の柱にしている。いわゆる外国人排斥運動だが、標的となっているのは400万人を越えるトルコ人移住労働者や、アジア系の人々だ。とくに人数の多いトルコ移民が襲撃され、死者まで出ている。その背景には、いうまでもなく旧東独地域における生活の貧困と社会不安がある。

 失業率で見ても、旧西独地域の6.6%に比べ、旧東独地域では11.9%と、ほぼ2倍だ。貧困層の割合もそれに順じている。もちろん、このような社会的、経済的な状況を排外主義的政治思想に利用しようとするNPDなどのネオナチ・極右勢力の攻撃に対し、カウンター行動を行う、反ナチ活動家も多く存在している。

 次の新聞記事を見るまでもなく、このようなドイツにおける人種差別的かつ排外主義的な活動とそれを容認するような社会意識は権力機関の中でも、強いのである。

 

■元国際司法裁判所判事の証言

 20世紀最大の大量虐殺(ジェノサイド)が行なわれた、アウシュビッツから生還した元国際司法裁判所判事のトーマス・バーゲンソール氏は、『朝日新聞』のインタビューに答えて、次のように語っている。

 

 

  ――11日に都内で行われた講演会で「ナチス・ドイツによる大量虐殺は、過去の話でもなければ、どこか遠くの国のことでもない」と話しました。どういうことですか。 

 

  「特定の条件下であれば、いつでも、どこの国においても、ジェノサイドは起こりえます。あれは第2次大戦中のドイツが行ったことで、今はもう起こりえない、ということではありません」
 

  ――その条件とは。

  「社会の中の不寛容です。政治的なものもあるし、経済的なもの、民族的なものもあります。そして憎悪。力を持つ集団が別の集団を憎悪し、それがジェノサイドを引き起こします。表面的には何もないように見えても、すぐ下ではびこっていることを意識してほしい」
 

  ――なぜ人間は、あれほど残虐になれるのでしょう。第2次大戦中、強制収容所のナチスの軍人たちは、どういう人たちでしたか。

  「彼らは、家では普通の生活をしている人たちでした。戦争の状況下でなければ絶対にやらないような凶行をした人が、家に帰り、手を洗って子どもたちと遊ぶということをしているわけです。もともとは普通の人たちが、特定の条件に置かれるとそういう行為に走る、ということがあります。自分の仕事に有利だとか、家庭を守るためとか。抵抗できないということはあります」

(『朝日新聞』2013919日 聞き手 編集委員・刀祢館正明氏)

 

 

 日本でヘイトスピーチ(憎悪・差別煽動)を行う「在特会」。彼らを取材した、安田浩一氏は、その著作『ネットと愛国』の中でトーマス・バーゲンソール氏と同じことを述べている。

 聞くに堪えない人種差別的・排外主義的罵詈雑言をはいている彼ら、彼女らは、何も特別な思想の持ち主でも、性格破綻者なのでもなく、あなたの隣りにいる、ごく普通の人達なのだと彼は話す。

 

  「在特会とは何者かと聞かれることが多い。そのたびに私は、こう答える。あなたの隣人ですよ――」(『ネットと愛国』)

 

■最近目についた人種差別関連記事■

 

・<イタリアの黒人差別>

伊初の黒人閣僚にまた嫌がらせ……バナナ投げる

 

【ローマ=青木佐知子】ロイター通信によると、イタリア初の黒人閣僚セシル・ケンゲ移民問題担当相が26日、同国中部チェルビアでの政治が政治集会中、聴衆からバナナを投げつけられる嫌がらせを受けた。

 ケンゲ氏はコンゴ民主共和国出身。イタリアでは、上院副議員が今月、「オラウータン似ている」とケンゲ氏を中傷して謝罪に追い込まれるなど、人種差別的な言動が相次いでいる。(『ロイター通信』 2013729日)

 

・<スイスの黒人差別>

 スイスに「黒人差別存在」 年収74億円、米セレブと知らず……店員「あなたには買えない」

 

 

 

 【ニューヨーク=黒沢潤】米国の女性人気司会者で大富豪のオプラ・ウィンフリーさん(59)が、スイス・チューリヒのブティックで高級バッグを見せてもらおうとしたところ、店員から「あなたには買えない」と拒絶されていたことが分かった。

 

 アフリカ系米国人のウィンフリーさんは、移民問題などを抱えるスイスに「(黒人差別が)存在する」と米テレビ番組で指摘。慌てたチューリヒ観光局が謝罪する事態に発展した。

 

 ウィンフリーさんは7月下旬、友人の大物米国人歌手、ティナ・ターナーさん(73)の結婚式に出席するため、ターナーさんが住むスイスを訪問した。

 

 米ABCテレビなどによると、ウィンフリーさんは、ワニ皮製の高級バッグ(約3万8千ドル=約370万円)を見せるよう言ったが、女性店員に「いいえ。これは(価格が)高過ぎます」と断られた。再度頼んだが、「あなたの感情を傷付けたくありません」と言われたため、「たぶん私には買うお金がないのね……」と店を出たという。

 

 メディアで大活躍のウィンフリーさんの昨年度の推定年収は7700万ドル(約74億円)で、資産も同28億ドル(約2700億円)と、高級バッグを購入できない身分ではない。店側は「誤解があっただけ。人種差別ではない」と釈明するが、米国では知らない人がいないセレブがスイスで受けた“仕打ち”に、ウィンフリーさんは怒りをあらわにしている。

 

(『産経新聞』 2013811日)

 

・<イギリスの人種差別>

 なぜ非白人狙う…英キャメロン政権の移民政策に労働党批判「差別的」

 

 

【ロンドン=林路郎】キャメロン英政権が、移民の数を年間10万人未満に制限するとした公約実行に本格的に乗り出した。

 2015年の次期総選挙を視野に、「反移民」を掲げる右派政党に奪われた支持層を取り戻すことが狙いだ。歴史的な移民への寛容政策を転換しようとする首相に、最大野党・労働党などは反発を強めている。

 英内務省は今月1日、ロンドン、マンチェスター、ダラムなど都市部で不法移民の一斉摘発を行った。不法就労などの疑いがある139人を摘発し、マーク・ハーパー移民担当相は「脱税や劣悪な労働環境を生む不法移民を許さない」と成果を強調した。

 ところが、この後、捜査官が有色人種だけを選び、職務質問したと、人権団体などが問題提起した。実際、摘発された人の多くは黒人や南アジア系だった。

 最大野党・労働党のドリーン・ローレンス下院議員は「移民には白人もいる。なぜ非白人だけ狙うのか」と人種差別があったと指摘。これを受け、行政機関に是正措置を命ずる権限を持つ国の独立機関「平等人権委員会」が実態調査に乗り出した。英国は、1976年の人種関係法や2006年の平等法で人種に基づいて人に不利益をもたらす行為を禁じており、同委が是正を求める可能性がある。

 同委は、内務省が移民の多いロンドン郊外の6地区で「不法滞在者は出国しなければ捕まる」と移民を脅すかのような広告を掲載した車両2台を7月下旬に走らせたことも問題視する。

 英国は伝統的にアジア、カリブ海、アフリカなどの旧植民地出身の移民に寛容だった。冷戦後はポーランドなど旧東欧からも多くの移住者を受け入れ、08年のリーマン・ショック後、その数は年間20万人を超えた。

 2010年の総選挙で、当時、最大野党だった保守党党首のキャメロン氏は移民規制を公約した。首相就任後、まずは移民の数が多いインド人技術者を狙い撃ちした査証発給制限などを行った。首相は秋には不法滞在者を雇った事業者への罰則を強化する新法案も下院に提出する方針だ。「英国人から雇用を奪う移民の排斥」を打ち出し、右派政党・独立党が支持を拡大していることが念頭にある。

 これに対し、労働党は、首相の政策は「人種差別的」として政権攻撃の材料とする構えだ。

(『読売新聞』2013811日)

 

 

 

 

| 連載差別表現 |