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第113回 三位一体の悪法が国民を監視する
■アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃の闘士――ネルソン・マンデラ氏死去
 12月10日、南アフリカ共和国の元大統領、ネルソン・マンデラ氏の追悼式が、ヨハネスブルグ郊外で執り行なわれた。
 アメリカのオバマ大統領を始め、イギリスのキャメロン首相、フランスのオランド大統領など、主要各国のトップと歴代首脳も参列した。南アフリカ出身の女優、シャーリーズ・セロン、U2のフロントマン、ボノ、スーパーモデルのナオミ・キャンベルなど、各界からもアパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃させた、歴史的な指導者の死を悼み、多くの人々が参列していた。
 しかし、報道から知る限り日本からは、皇太子と、福田元総理以外に参列した様子はない。日本の人権意識の低さが、マンデラ元大統領の追悼式を通じて、はからずも露呈したといってよい。日本に黒人居住者が少ないというのが、その理由であるとしたら、国連加盟国の中でも、とくに先進国中で人権意識が最下位であることを、自ら証明したようなものであろう。さすが「名誉白人」の称号を戴いたことだけはあると、あなどられても仕方ない。
 マンデラ元大統領は、アパルトヘイト撤廃を通じて、人類の人権意識改革を成しとげた偉大な指導者であり、その功績はいくらたたえても、たたえ過ぎるということはない。

■特定秘密保護法につづいて共謀罪が
 11月5日、最高裁が、「婚外子」差別を違憲とし、相続分について「嫡出子」と同等の権利を保障することを明記した民法改正案が、「特定秘密保護法案」強行採決で混乱している中、12月5日に国会で可決、成立した。
 当然のことといえば当然だが、遅きに失した感は否めない。
 また最高裁は、12月10日、「性同一性障害」で性別を女性から男性に変更した夫婦の子ども(第三者からの提供された精子で妻との間に生まれた)について、父子認定を行った。
 しかし、欧米ではすでに、同性間の婚姻を認め、市民的権利を保障する立法処置がなされており、日本もこの最高裁判断を契機に、法律上、制度上の同性愛者差別撤廃を実現する方向に大きく踏み出す必要があろう。
 一方で、12月11日の新聞各紙に大きく報道されている、「共謀罪」創設について、政府はその立法を急ぐ理由として、2000年に国連で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために必要な国内法整備の一環と位置づけていると、説明している。
 しかし、実態は、「特定秘密保護法」、「通信傍受法」、そして、「共謀罪」と一連の国家による国民監視の集大成とも言えるものであり、海渡雄一弁護士の言葉を借りれば、この三つの法律は「三位一体」であり、「共謀罪を創設した後、それを取り締るための通信傍受法の範囲拡大に突き進むだろう」ということになる。
 

<※共謀罪=重大な犯罪にあたる行為を「団体の活動」として「組織により」実行しようと共謀すると、実際に行動を起こさなくても、それだけで罰するという内容。>(『朝日新聞』2013年12月12日)
 

 国際人権規約、人種差別撤廃条約など、多くの人権条約を批准しておきながら、国内法はいまだに未整備のままだ。国連の人権理事会からのたび重なる勧告に耳をかさず無視し続けているにもかかわらず、なぜかこの条約にかぎっては、2003年から、3度にわたって、関連法案を提出している。
 いずれも廃案になっているが、そこに、「犯罪」という大義名分の下に、国民の政治的権利と表現の自由を侵害し、保安処分の名のもと予防拘禁的危険性が、指摘されたからである。
 この国の度し難い人権意識の希薄さの行きつく先が、戦前の治安維持法的悪法の復活であり、表現の自由の抑圧であることを、自覚する必要がある。
 
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