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第177回 不当な「除名処分」を糾す その1

 今般、私は、解放同盟組織内手続きに従って、「除名処分に対する抗告申し立て」を2016年2月4日付で表明、中央本部宛に文書を送付した。(資料 
 
○異例の中央執行委員会発議による「除名処分申請」
 
 2016年1月27日に、1月26日付の“中央組織規律委員会決定に関する通知”が届いた。
 “通知”(資料◆砲蓮∋笋紡个垢觸名処分が決定されたと記されている。
 2015年6月19日に開かれた解放同盟の中央執行委員会で、私に対する除名処分の発議申請決定(資料)を受け、2015年9月4日に開かれた中央組織規律委員会への出席を求められた(資料ぁ忙笋蓮当日、その場で「中央執行委員会の発議による除名処分申請について」に対する異議申立書(資料ァ砲鯆鷭个掘一時間にわたって除名発議の不当性と冤罪性について反論し、反証した。

 
○2015年9月4日 中央組織規律委員会での反証

 その中央組織規律委員会の場で、中央執行委員会として一度も私に対する事情聴取を行っていないことが判明し、中央執行委員会と私との話し合いを行うことが論議の一つとなっていた。
(後に記すように、私に対する除名発議はすべて解放出版社の調査委員会報告<それもごく一部である>を根拠にしたもので、弁護人間のやりとりさえ、その一部を都合よく「改ざん」したずさんなものである。)

 
○なりふりかまわぬ不当除名処分の政治的・組織的意図

 9月4日の結論の一つは、私と中央執行委員会で話し合う、ということであった。ところが、それ以降なんの連絡もなく、5か月間放ったらかした後に来たのが、先の「除名処分通知」であった。
通常、除名処分申請は、支部または都府県連単位で出されるのだが、私に対しては、異例の中央執行委員会発議であった。そこに、今回の不当除名処分の政治的・組織的な意図が色濃く反映されている。
 その意図とは、私が2015年5月下旬に上梓した『部落解放同盟「糾弾」史』(ちくま新書)の中で、次のように述べていることに同盟の委員長・組坂繁之が恐怖を感じ、なりふりかまわず私の除名処分を強行し、記述の信憑性を貶(おとし)めようとはかったことにある。(資料Α

 
「別件処分」――焦りの背景 『部落解放同盟「糾弾」史』はどう読まれたか

 その背景には、今年の3月3日に解放同盟の第73回大会が東京の日本教育会館で開かれるが、本年度は2年に一度の人事大会でもある。組織トップの委員長・組坂の器量、度量の狭量さと小心さが、部落解放同盟とその運動の衰退を招いている最大の組織的原因だが、にもかかわらず、まだ委員長職にしがみつこうとしている、その醜悪な性根を徹底的に批判したのが、先の『部落解放同盟「糾弾」史』である。
 除名処分の理由とされている解放出版の不正経理は2014年10月のことであり、翌年の2015年1月末には解決している。
 なぜ6月19日の中央執行委員会で「発議」されなければならないのか。そのよこしまな意図が、拙著の上梓とその内容に恐怖した結果であることは明白である。
 「別件逮捕」ならぬ「別件処分」、解放出版社不正経理に関しては恣意的に切り取った改ざん資料ではなく、弁護士間のやり取り、事情聴取の全文など、全資料(証拠)の開示を、私は9月4日の委員会でも求めている。

 
○解放運動に批判的意見表明すれば、「別件除名処分」?

 今回の「除名処分」に関する背景と経過には、完全な冤罪のパターンがある。これで狭山差別裁判を闘いきれるだろうか。全国大会の代議員に訴えたい。至上最悪の解放同盟委員長・組坂を再び選ぶような愚を犯してはならない。今後も引き続き委員長・組坂の日和見と無責任性を追及し、筆誅を加えていく。
 なお、私が出席した9月4日中央組織規律委員会で、委員長・組坂の意を受けて、反知性主義的な主張を私に向けて行っていたのは、飯田敬文中央組織規律副委員長で、同盟和歌山県連の副委員長でもある。
 和歌山県連は、2015年11月16日、東京・都市センターホテルで開催された「人権フォーラム」実行委員会のメンバーである。その時の基調講演は、なんと!自民党政調会長“稲田朋美先生”であった。(資料А
 
 さらに、もう一人の中央組織規律委員会副委員長の中川貢氏の出身は高知県連である。その高知県連書記長・山戸庄治氏は、宿毛市時代に、解放出版社の本を売りさばいたが、県連事務所で私と話し合って約束したにもかかわらず、500万円以上を踏み倒している事実も明らかにしておく。
 解放出版社を舞台にしたこれに類する行為は、委員長・組坂も数度に渡って行っていることも、付記しておく。



【資料 曄攣駑銑◆曄攣駑銑】【資料ぁ














資料
2015年9月4
小林健治
提出文書 目次
 
 
1.「中央執行委員会の発議による除名処分申請について」に対する異議申し立て書                                P.2                                          
 
 
 
 
2.資 料
 
_鯤出版社のある不祥事                     P.8
 
⊇佝如人権差別問題懇談会 加盟会社社長宛に出された文書     P.9
 
出版・人権差別問題懇談会幹事会から解放出版社社長宛に出された文書 P.10
 
ど落解放同盟中央執行委員長・組坂繁之名で出された文書について  P.11
 
ソ佝如人権差別問題懇談会 活動の軌跡               P.15
 
γ羆規律委員会宛の多井みゆき(A職員)の弁明書                  P.17
 
 

 
1. 「中央執行委員会の発議による除名処分申請について」に対する異議申し立て書
 
2015年9月4日 小林健治
 
_鯤出版社東京営業所における不正経理に関して
 
★「その横領金が蠅砲鵑欧鷭佝如幣林健治・代表取締役)の運営経費に活用されている事実も判明している」について
 
このような事実は一切存在しないし、2014年10月9日の解放出版社調査委員会におけるA職員、小林の事情聴取においても、そのような事実を認めていない。
 
○小林が調査委員会に出席した理由は、AおよびB職員を助け支えてやってくれという弁護士の安田好弘先生の依頼を受けてのことである。
北口星弁護士による「捜査機関に委ねる」「刑事告訴する」【注】などの恫喝に怯え、二人が憔悴しきっており、調査委員会に一人で応じられる状態ではなく、同伴を求められてのことである。
【注】「捜査機関に委ねる」「刑事告訴する」するとは、解放出版社及び中央本部の会計に捜査が及ぶということを全く理解していない。)
 
○調査委員会で私が語ったのは、「A職員の行った行為は許されるものではないが、その背景に『にんげん出版及び小林』を何とか支えたいという意思もあり、私にも道義的責任がある」ということを述べているに過ぎない。
私は今回のA職員の横領事件には一切関わっていないことを、この場で明言しておきたい。
 
○調査委員会の発言録等をみてもらえばわかるが、調査委員会での質問は、ほとんど北口弁護士によるもので、あたかも検察官のごとき尋問であり、調査委員会の発言録は、いわば“検面調書”(検察官面前供述調書)ともいうべき性質のものである。(冤罪はつねに検面調書によってつくられている)
私の発言は“捜査機関に委ねる”“刑事告訴する”という北口弁護士の脅しからA職員を守ることを念頭においており、その観点から、事情聴取の反訳(テープ起こし)を見ていただければ、私がA職員の横領行為に直接関わっていないことは、わかることである。
 

 
東京営業所で採用していたアルバイト職員を蠅砲鵑欧鷭佝任龍般海暴昌させていたことについて
 
解放出版で長年仕事をしていた関係から、雑誌『部落解放』の企画(ヘイトスピーチなど)や、ライターとしてかなりの時間をさいて常時協力していたこと。および『花と死者の中世』(中島渉著)、『飛べ!世界へ』(佐藤真由美著)など、単行本の企画・編集にたずさわっていたことなどの労働の対価(約300万円)として、にんげん出版の業務の一部を手伝ってもらっていたことは事実だが、強制したわけでもなく、これが問題というなら、依頼を断って、労働の対価を支払えばよいだけの話であり、とやかく言われる筋の話ではない。
またこれは、「解放出版」と「にんげん出版」の出版事業における提携・協力関係であり、そのことの是非と除名処分が、どのような関係でつながるのか、全く理解できない。
また、にんげん出版に従事していたアルバイト職員に支払われた賃金を、全額、A職員が弁済しており、小林に請求はされていない。
 
さらに「自らが飲食した代金などもA職員に請求していたとのこと」について
 
接待で飲食したさいに、昔の解放出版社宛で領収書を切られたこともあり、それを解放出版で落としてもらったこともあるが、逆に解放出版の上様宛領収書をにんげん出版で落としたこともあることをいっておきたい。さらに、出人懇の講演料(約10万円)は何度かA職員に渡している。
 
ぃ楚Π横領のおもな使い道
 
(略)
 
 
ァ弊岼翆羲后砲痢岼妥鎚杆郢里痢嶇⇒蹇廚涼罎法∋杏は多井さんが使ったと、みずほ銀行の方は、小林さんが費消したと書いてあります」(10月9日)との発言について
 
○2014年10月7日付で、安田弁護士が北口弁護士に出した「御連絡2」のことを念頭においた発言と思われるが、誤解のないよう、ここに全文を紹介しておく。
 
1.今回の金員の不正使用につき、調査しました結果、三菱UFJ銀行口座からの不正使用と、みずほ銀行からの不正使用があり、前者は多井氏が全て費消していますが、後者の多くは同氏の夫である小林健治氏が関与していることが判明しました。
 
読んでわかる通り、みずほ銀行口座について小林が“費消”しているとは全く書いていない。小林が「関与していることが判明」していると記されているだけである。
それは、大阪屋と熊本県連の件についてのことであり、それ以外について小林は全く無関係であり、一切、何も知らなかったことは、10月9日に行われた、私とA職員の事情聴取の中でも明言されている。
 
・大阪屋→取立てを頼まれたので実行しただけである
・熊本県連からの振込金については、解放出版社の口座を経由して熊本県連に還流している(個人名を書いた振込領収書がある)

 
δ敢魂當の違法性
 
○解放出版社東京営業所の鍵をビル管理会社に無断で取り替え入口を封鎖した行為→器物損壊罪
 
○解放出版社のアルバイトや職員(全員女性)に、内容証明や電話で、同僚との接触禁止を強権的に行いかつ刑事告訴をちらつかせ恫喝して事情聴取したこと。
 
○とくに、B職員に対する恫喝は、刑法の誣告 ( ぶこく ) 罪さらに名誉毀損罪に該当することが明白であること。そして、聴取に応じなければ「捜査機関に委ねざるを得ない」と恫喝し、「刑事告訴」すると脅している行為(10月8日付文書)は、弁護士としての職務を逸脱しており、懲戒請求の対象となりうること。
 
○さらに、「横領金」の半額を返済し、残金も早急に支払うと弁護士間で通知しているにもかかわらず、不当に強行されたA職員の自宅マンション「不動産仮差押」は、A職員が解放出版社の提示する金額の全額を弁済(2014年12月25日)した後も、一ヵ月間、放置された。
その理由は、差し押えを取り下げる条件として、北口弁護士が提示した「合意書」を、AおよびB職員が拒否したことにある。
 
・一つは、B職員が申し立てていた未払い賃金および賞与など一切の権利を放棄すること。(*ちなみにB職員は在職期間中の残業代未払いについて申し立てていた。)
・二つめは、自分(北口星弁護士)に対する懲戒請求・訴訟提起などを含め一切の責任を追及しないことを約束せよ、という北口弁護士からの「合意書」の条件を、安田弁護人を通じて、A職員およびB職員が拒否したことにある。
しかし、安田弁護士による「仮差押決定の取消申立」が大阪地裁に出される(2015年1月7日)に及んで、1月20日「債権者は申立の全部を取り下げます」と、「取下書」を大阪地裁に出すに至る。
 
○北口弁護士から出された「合意書」に自ら認めているように、今回の調査委員会の調査方法には、多くの違法行為と、権力を笠に着た強圧的かつ事情聴取対象者の人権を無視した、悪質な行為があったことは、北口弁護士が“懲戒請求”を恐れているところからも明らかである。(弁護士間のやり取りの文書に詳しい)
 
○明らかなことは、にんげん出版と小林に横領金が渡っているとの結論ありきの(検察で言うところの“筋立て”)不当な調査であり、しかも調査過程で違法行為がくり返されているなかに、調査目的の異常性と差別性(小林、にんげん出版、出版・人権差別問題懇談会に対する)が浮かび上がっている。
アルバイトの一人が、A、B職員ならびに小林と接触することは許されず、刑事告訴すると脅しを受けた事情聴取の時のことを、次のように語っていることを記しておきたい。
 
こんにちは。
ご連絡有難うございました。
先日もお返事を頂きながら、返信できずにすみませんでした。
解放出版とにんげん出版の皆さんと、接触することは勿論ですが、電話もメールも禁じられてしまいました。本来であれば、本返信もNGなのですが、私も気になっておりました。
2日から、訳も分からず、ドタバタが起こり、いきなり自宅待機。知らない方から、携帯に何度も連絡があり、留守電に、解放出版からお給料を貰った形跡のある方、全員にヒアリングをする。誰とも接触するなとの事でした。
経理に不正が見つかったとの事でしたが、私は解放の側からのお話しか聞いておりませんので、事実なのか?狐に包まれた感じで、信じられない気持ちで一杯です。
○○さんや、前任者の○○さんは、心労で寝込んでしまったようです。私たちアルバイトも、正直、度重なる電話やヒアリングで、地獄のような一週間でした。
 
Х誅
 
このような違法で強権的な調査により、事実無根の罪を着せられ、解放同盟を除名されることは、到底、受け入れられない。まさしく冤罪であり、仮に除名が強行されるのであれば、公の場で争わざるを得ないと考えている。
本来なら、解放出版社内部の問題であり、小林についても部落解放同盟内部の問題であり、敵対勢力との関係ではなく組織内部の問題である。それを、国家権力=検察権力の力を背景に、強権的に人権無視の弾圧をおこなったことは、それこそ反権力・反差別の部落解放同盟として許されることではない。さらに、組織内部の問題を外部に“通知”するなどの行為は、組織原則を逸脱する利敵行為といわざるを得ない。
 
┷埜紊
 
A職員、B職員の弁護人で、長年、部落解放運動をはじめ冤罪事件など人権問題に深くかかわってきた安田好弘先生が、解放運動を支援し擁護してきた立場から、A職員や小林に対し、一刻も早く謝罪し、弁済することを強く指導したこと。にもかかわらず、調査委員会側の代理人弁護士の、不用意で、人権を蹂躙するような恫喝、脅迫に対し、一線を越えた極めて悪質な行為であり、今までの解放同盟との信頼関係が損なわれたことは慙愧に堪えない、と率直に語っておられたことを記しておきたい。
 

【追記】
 〈部落解放運動の取り組みに対して誹謗中傷を繰り返している〉 について
 
「誹謗中傷」の中味について、具体的に書かれていないので推測するしかないが、たぶん6月に筑摩書房より刊行した『部落解放同盟「糾弾」史―メディアと差別表現』(ちくま新書)のことを指しているのだと思う。
 しかし、そのどこが“誹謗中傷”(根拠のない悪口を言って相手を傷つけること)[広辞苑] なのか、説明してもらいたい。
 
“日の丸・君が代”問題なのか、野中広務さんに対する麻生太郎現副総理兼財務大臣の“差別発言”を中央本部が糾弾しなかったことなのか。
本の中には記していないが、なべおさみが書いたトンデモ本『やくざと芸能』の書評が解放新聞中央本部版(2014年6月23日号)に載ったことを批判していることなのか、判然としない。
 
なべおさみの『やくざと芸能』については、このトンデモ本を騙されて書評した商業週刊誌ならまだしも、部落解放同盟中央本部の機関紙、『解放新聞』が、好意的に書評したことは紛れもない事実だ。しかも、このことは解放同盟中央本部が、なべおさみの、部落問題に関するエセ同和的出版・講演活動に、お墨付きを与えたということになる。とにかく、誹謗中傷の内容を、具体的に明示すべきである。
解放同盟中央機関紙上で、未だお詫びと訂正の記事を目にしていないので、誰が書評を依頼し、掲載することを決めたのか、責任の所在も併せて、明らかにすべきだろう。

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【資料Α曄  

『部落解放同盟「糾弾」史』 序章・終章より抜書き

 
■麻生太郎の部落差別発言
 そのもっとも重大な事件が、魚住昭さんの『野中広務 差別と権力』に記されている。
 2003年9月11日の自民党総務会で発せられた、麻生太郎氏の部落差別発言である。
 野中広務氏は糾弾する。
        *
 総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを、私は、大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんかできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!』野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。
         *
 この麻生の差別発言について、野中さんは全国各地で行っている講演でも、必ずこの問題にふれている。2005年、狃佝如人権差別問題懇談会瓩裡隠擬年記念講演でも、力を込めて麻生太郎を糾弾している。
 さらに、2009年1月17日、ニューヨークタイムズ紙に、自民党を離党し、国民新党幹事長となった亀井久興氏が登場して、河野派の幹部会だった狢舁Σ餃瓩任痢嵋秬犬虜絞免言」を事実だと語っている。
しかし、部落解放同盟中央本部は、野中広務氏の告発に応えて麻生を糾弾したこともなければ抗議さえしていない。
 いったいなぜなのか。同盟の委員長が裏で手打ちをしたという噂を聞いたが、それは重要な問題ではない。重大な事実は、このような権力をもつ政治家によるあからさまな許しがたい差別発言について、抗議も糾弾もしなかった(できなかった)という解放同盟中央本部の思想的脆弱性(ぜいじゃくせい)にある。
 ここで断っておかねばならないのは、私が批判の俎上(そじょう)に載せているのは、解放同盟中央本部の、とくに委員長、副委員長などのトップ役員であり、日々、地域で頑張っている都府県連・支部の活動家のことではない。
 糾弾にダブルスタンダードは許されない。このような体たらくな組織に、なぜ中央本部は頽落(たいらく)してしまったのか。
 一つには、組織トップ委員長の器量、度量の狭量さにあることは否定できないが、その小心さを支えているのが、コンプライアンス運動ともいうべき、組織の闘争姿勢の変節である。
 
■解放同盟の弱体化の原因は
 それがもっともシンボリックに顕(あらわ)れたのが、2003年の、野中広務氏に部落差別発言をおこなった政治家・麻生太郎を糾弾することを避けた事態である。『差別と権力』を書いた魚住昭氏が中央本部に聞き合わせたときも、「麻生氏が本当にそういう発言をしたかどうか、本部では確認が取れていない」と返答したという。最初からおよび腰なのである。
 何をどう糾弾するかの手順としても、まず事実の確認(事実確認)をして、抗議すべきなのだが、すでにのべたように、ニューヨークタイムズ紙で麻生発言の事実が亀井久興氏によって暴露された2009年にも何の動きも起こさなかったのである。それどころか、抗議行動を起こそうとした学者・文化人の動きを押さえ込もうとさえしたと聞いている。
 糾弾に時効はない。
 何年前のことであっても、事実があきらかになり、しかも加害者が故人でなく現役の内閣総理大臣(2009年当時)であるにもかかわらず、同盟本部は、一通の抗議文すら出さなかった。
この糾弾闘争史を読んでこられた読者は、「なぜ何もしないのか?」と不思議に思われるであろう。
話を戻そう。麻生の部落差別発言が公となり、国際的にも大きく報じられた後の同盟全国大会では、「なぜ抗議しないのか」と、代議員からも突き上げられた。にもかかわらず、批判の声を封殺したのである。水面下で麻生と本部委員長が犲蠡任銑瓩靴燭箸力辰發気気笋れている。それが事実とすれば歴史的汚点であり、いずれ白日のもとに晒(さら)されるであろう。ここでは、なぜ解放同盟中央本部が、権力(国家)に対する糾弾を避けるようになったのかについて、問い返してみたい。

 
■日の丸・君が代問題と解放同盟
 敗戦後の部落解放運動に道筋をつけた「部落解放全国委員会」から「部落解放同盟」に名称変更して、2015年で60年になる。
 現下日本では、戦前の修身を復活させるかのような「道徳の教科化」を強行し、教育への国家統制が強められている。各地の教育現場では、「国旗・国歌法」制定の主旨に反して「日の丸・君が代」の強制が行われ、反対する教職員に対する弾圧も厳しさをましている。
 1999年に成立した国旗・国歌法は、当時、小渕内閣の官房長官だった野中広務さんが推進したものである。その背景にある政治的意図についてははぶくが、この国旗・国歌法制定の渦中の1999年2月、広島県立世羅高校の石川校長が、教育委員会のたび重なる威圧・強圧に耐え切れず、卒業式当日に自裁するという痛ましい悲劇も起きている。
 この石川校長の自裁から2日後の、1999年3月2日から3日にかけて、部落解放同盟の第56回全国大会が、東京・九段会館で開かれた。
 その大会初日のことである。
 大会議案書には、当然、日の丸・君が代=国旗・国歌法制定に反対する運動方針が書かれている。大会では、代議員と執行部で運動方針を論議するのだが、その頃の同盟の問題意識は、「地対財特法」の期限切れを控えての人権擁護法案などにあり、日の丸・君が代問題が中心議題でないことはたしかだった。しかし、同和教育と直接関係する重要な政治的課題であることはまちがいなかった。
 大会当日、九段会館にもっとも近い新聞社の解放同盟担当記者が、午後遅く取材にやってきた。大会の論議を終了まぎわしか聴いていなかったが、彼の問題意識は、世間を騒がせている国旗・国歌法制定にあった。
 それゆえ記者は、「解放同盟全国大会開催。日の丸・君が代に反対」との見出しの記事を書き、翌日の朝刊に掲載されることになった。ところが、当時マスコミ担当だった私に、同盟本部委員長は、「何だ、この記事は! こんなことは論議していない」、さらに「野中(広務)さんに知れたらまずい」と怒りを露わにしたのである。私は驚き、あきれはて、開いた口が塞がらなかった。
 
■政治権力に ( おび ) えるようになったのは
 くり返すが、国旗・国歌法制定反対は、同盟の運動方針に明示されている。その方針にそって、広島県連をはじめ、全国の都府県連が反対運動を展開していたにもかかわらず、本部委員長自身は、それを推進している野中さんに気を遣って、明確に反対の意思表示をすることを恐れたのである。
もし、あの当時、同盟中央本部が、本気で国旗・国家法制定に反対する運動を展開していれば、野中さんの豪腕があったとしても、はたして法成立が実現したかどうかは、疑わしい。
 このことは、上杉佐一郎委員長、上田卓三委員長、小森龍邦書記長、川口正志副委員長、羽音豊副委員長ら、歴戦の闘志が同盟中央本部を去った時期に、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのある政治家で、権力の中枢を担っていた官房長官の野中さんが、複数の同盟役員を通して、弱体化していた同盟中央に深く影響を及ぼしていた事実と符号する。
 ところが、野中さんが議員活動を終え、権力から離れた後には、手のひらを返したかのように疎遠になり、ついには、麻生の部落差別発言に対する、野中さんの気力を振り絞っての糾弾に何ら報いることなく、同盟中央は一切の抗議を行わず、差別発言を封印したのである。
その後も、麻生の「ナチスの手口に学べ」(2013年7月29日)など一連の発言や、安倍政権のとどまるところを知らない反動化に対し、同盟中央本部は、具体的な動きをとっていない。大会議案に「国権主義反対」、「安倍政権反対」とスローガンを書き込むだけなら、権力にとって怖れるに足らずだ。(以下、略)

【資料А朮鯤新聞2742号   2015年12月14日


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