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第181回 部落地名総鑑糾弾闘争の教訓


○差別犯罪本「全国部落調査」(出版元・示現舎)
 
 差別犯罪本「全国部落調査」の出版元・示現舎は、いまだに「4月1日に発刊する」とうそぶいている。
 この間の事情については、緊急事態としてウエブ連載178回でふれた。アマゾンには50数冊の予約注文があったというが、アマゾンは当然、販売キャンセルすべきだし、その取り組みをおこなわねばならない。
 紀伊國屋書店や宮脇書店をはじめ、全国の主だった書店も、学者や学校関係者からの連絡を受け、直取引に応じない、と言明している。
 いま、喫緊の闘争問題は、この差別犯罪本の発売元・示現舎に対する徹底した抗議と糾弾だろう。

 

○匿名の告発から始まった『部落地名総鑑』糾弾闘争
 
 今から41年前の1975年、今回と同じく、全国の被差別部落の所在地や戸籍・主な職業などを記載した、いわゆる『部落地名総鑑』が密かに出版され、多くの企業や大学、病院などが購入していたことが発覚し、解放運動史に残る大糾弾闘争が展開された。
 周知のように、事が発覚したのは、一通の匿名の封書が、解放同盟大阪府連の人権対策部宛に届いたところから始まる。今でいう内部告発である。

 

○「人事極秘『特殊部落 地名総鑑』」の発行者を探し出す
 
 そこには“企業防衛懇話会”なるいかがわしい団体から、各企業・団体の人事担当部長、課長宛に出された<人事「特殊部落 地名総鑑」発行について>の文章が同封されていた(特別頒布価格・壱部 金3万円也)。
 当時、大阪府連の上田卓三委員長、向井正書記長、山中多美男政治共闘部長らが先頭に立って、この人事極秘『部落地名総鑑』の発行者「京極公大」こと「坪田義嗣」をさがしだし、直接、糾弾している。
 その糾弾の過程で、多数の企業や大学、病院が購入していることが発覚し、さらに、その他にも9種類近くの「部落地名総鑑」類似本の存在が明らかになった。


 
○1975年「部落地名総鑑」糾弾声明
 
当時、解放同盟中央本部は、これらの事実確認を元に、マスコミ各社を集めて声明を発表している。その時の全文を以下に掲げておく。

           ***
           
           声 明

 
 今般、部落解放同盟大阪府連合会によせられた、匿名の手紙によって明るみに出た企業防衛懇話会(理事長・京極公大)発行の「人事・特殊部落地名総鑑」について、わが部落解放同盟は、その悪質きわまりない差別性を重視し、全国的な糾弾闘争を展開するものである。

 一.本書は全国に散在する被差別部落の所在・新旧両地名を明らかにすることによって、何代にもさかのぼって出身をあばき、差別を拡大助長し、興信所などによる身分調査にも悪用され、結婚差別をひきおこし、また就職の機会均等を奪い、採用から排除することをねらったものである。しかも総需要抑制・不当首切り時に符ちょうを合わせたものであり、部落解放運動史上に例を見ない悪質なものである。
 
 二.わが部落解放同盟が、壬申戸籍のたたかい、さらには戸籍の公開の規制のたたかい等をすすめ、とくに同対審答申10年、特別措置法残り3年というきわめて重要な今日の課題にまったく逆行するもので、差別意識を利用して、営利を目的とし、大企業を中心に販売している点は、許しがたい悪質きわまりない差別行為である。

 三.われわれは、ときまさに人権週間のなかで惹起した本差別事件の意味を深刻にうけとめ、日共・正常化連(注=全解連の前身)や、北原(泰作)の「差別はなくなりつつある」とするキャンペーンが、いかに誤っているかを暴露し、差別の存在をあらためて強く訴えるものである。
 
 以上の観点をふまえて、われわれは部落解放同盟の組織をあげて、

 1.総理府・法務・通産ならびに労働その他関係各省に対してきびしくその行政責任を追及するとともに、あわせて部落大衆の就職の機会均等の保障を強く要求する。

 2.「企業防衛懇話会」に対する糾弾闘争を行い、その責任を全国民とともに追及する。

 3.本「差別文書」を購入した企業を明確化させ、企業の差別性を追及する。

  以上、本日開催された部落解放同盟第三回中央委員会の名において声明する。
                   
       1975年12月9日 
       部落解放同盟第三回中央委員会
 


○今回の差別事件での、法務省への「申し入れ」
 
 ひるがえって、41年後の現在、部落解放同盟中央本部は、今回の差別犯罪本「全国部落調査」について何をしていたか?
「全国部落調査」本の出版が明らかになってから一週間後に、法務大臣と人権擁護局長宛に、下記の
<「全国部落調査 部落地名総鑑の原典 復刻版」発行・販売に関する申し入れ>
(下記資料参照)を出したが、要するに、権力=法務省に頼って、作成・販売の中止を要請しているに過ぎない。


 


*読みづらいと思われるので、上の「記」以下の、要請3点を再度列記しておこう。
 
(1)「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題した、被差別部落の地名などが記載されたこの書籍は、「出版の自由」「表現の自由」を逸脱するものであるととともに、明らかに差別目的であり、部落差別を助長するものと考えますが、法務省としての見解を明確にされたい。

(2)「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」の作成・販売が、差別を拡散し助長する恐れのある書籍であることから、この書籍が販売されないよう法務省としての方策を図られたい。

(3)この書籍の作成・販売が、差別目的であり、部落差別を助長するものだと認識したうえで、作成者である示現舎ならびに鳥取ループへの厳正な指導をされたい。さらに、インターネット上に掲載される被差別部落の地名一覧についても、規制の措置を取られたい。



 ではもう一度、1975年当時の解放同盟の<声明>をみてみよう。
 解放運動史上、例をみない露骨な差別事件として、全国的糾弾闘争を展開すると宣言し、具体的には

々埓責任の追及
◆峇覿繁姫匣話会」に対する糾弾
9愼企業の差別性の追及

 をおこなうことを決定し、後に、実行している。

 

○「差別を商うもの」に対し、今なすべきことは

 冒頭でも書いたが、緊急性を要する「全国部落調査」のアマゾンへの予約出品削除、宮脇書店および紀伊國屋書店など、全国のグループ書店への取り扱い中止などの抗議行動を起こしたのは、学者・教育者のネットワークや、自主判断した解放同盟の地方組織だった。
いま、中央本部がなすべきことは、
第一に、具体的な出版をされることによる被害(人間の命がかかっている)を食い止めること。(アマゾンがすでに予約注文を受けている50数冊の注文取消しの取り組みを行うこと)、
第二に、発行元の示現舎に、直接乗り込み、社会的な糾弾を、徹底的に公開して敢行することである。
 中央本部は、権力・法務省に頼らず、自力自闘で、差別者を糾弾し、発行・販売を阻止する運動を、41年前に倣って展開すべし。できないのなら、中央本部は解散すべきだろう。
















 
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