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第102回「婚外子」「嫡出子」用語を考える―婚外子差別違憲判決
■最高裁の違憲判決
 9月5日、最高裁は全員一致で、遺産相続における「婚外子」差別に違憲の判断を下した。
1898(明治31)年7月に施行された明治民法で「庶子及私生児ノ相続分ハ嫡出子ノ相続分ノ二分ノ一トス」と定められた、「婚外子」差別が実に115年を経て法的に撤廃されることになった。

 喜ばしい限りの司法判断だが、すでに、「婚外子」の相続問題は、30年以上前から、指摘をされていた不当な差別であり、あまりにも遅きに失したといわれねばならない。日本がすでに批准し加盟している国際人権規約(1979年)女性差別撤廃条約(1985年)、子どもの権利条約(1993)人種差別撤廃条約(1995年)などでも「婚外子」差別が基本的人権と市民的権利の侵害であることを指摘している。

 また、日本国憲法14条1項「すべての国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない」に抵触する民法規定であることも明らかだろう。

 さらに、批准し、加盟している「国際人権規約」の「自由権規約委員会」や「女性差別撤廃委員会」から1995年以降でも、日本政府は10回にわたって相続差別撤廃を勧告されていたのである。

 民法改正が遅れているのは自民党や民主党などの反対議員が「不倫を助長する」などと反発したことを理由としてあげているが、そんな愚にも付かない話ではない。日本の政治家(与党も野党も)の多くが、国際的な人権意識の水準から大きく乖離しているところに起因しているのだ。

■「婚外子」「非嫡出子」という言葉
 ここで私生子(児)、嫡子、庶子などの言語について、少し考えてみたい。
広辞苑(第六版)には、次のように書かれている。

「私生子(児)」とは
<①庶子に対して、父の知れない子の称。ててなしご。②〔法〕正式の婚姻関係でない男女の間に生まれた子を、その母に対していう語。父の認知を得れば父の庶子となる。1942年以後、民法はこの語を避け、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)または嫡出に非ざる子と改称。現行民法では、「嫡出でない子」という。私生児>

「庶子」とは、
妾腹の子。②嫡子(ちゃくし)以外の実子。そし。③旧民法で、父の認知した私生子。現行民法では庶子の名称を廃し、「父が認知した子」、また私生子をも含めて、「嫡出でない子」と呼ぶ。>

 「婚外子」差別の違憲判断を受けて、1995年の最高裁決定で「婚外子」側の代理人を務めた榊原富士子弁護士は、次のようなコメントを出している。
「嫡出子」用語再考を
<95年の最高裁決定で婚外子側の代理人を務めた榊原富士子弁護士の話>
相続規定は婚外子差別の象徴。もっと前に出てもおかしくない判断だった。合憲とした18年前の判断を誤りとはしなかったが、救われる思いの婚外子も多いはず。ただ、これで婚外子への全ての差別が解消したわけではない。「嫡出子(ちゃくしゅつし)」「非嫡出子」など差別的なニュアンスを持つ用語の廃止なども検討すべきだ。
(『朝日新聞』2013年9月5日)
 『字源』では「嫡出子」の“嫡”は、「啇(ねもと)」が、まっすぐという意を含み、「嫡」はそれを音として、女を加えた字で、<もともとは夫とまっすぐまともに相対する相手、つまり正妻のこと。転じて、正妻の産んだあとつぎの子の意となる>とあり、対語は、「妾」とある。「嫡嫡」(チャキチャキ)の江戸っ子とは、<正統でまじりっけのない意味のこと>だそうだ。

 差別的に表現されてきた字句を改正することによって、社会の差別意識をも変えてきた例として、「癩病(天刑病、乞丐(かったい)などの差別的な呼称もあった)」が「らい病」に代わり、そして1996年に差別的な「らい予防法」の廃止にともなって、やっと、“ハンセン病”という病名を正式名称として法的に確立した歴史がある。

 また部落差別に関しても「特殊(種)部落」→「細民部落」→「未解放部落」、そして“被差別部落”と、差別的な呼称からの変遷の歴史がある。

 言葉の問題をおろそかにしてはならない。なによりも、“はじめに言葉ありき”なのだ。
| 連載差別表現 |