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第86回 橋下大阪市長の朝日新聞社グループ提訴に正義はあるか
■『週刊朝日』への橋下市長の怒り
 4月6日、『週刊朝日』のウェブサイトに載った<「橋下さんではもう視聴率取れない」橋下市長は飽きられた?〈週刊朝日〉>と題された記事に怒った、橋下徹大阪市長が、昨年10月26日号の『週刊朝日』差別記事事件を蒸し返し、民事・刑事で提訴すると自身のツイッターで明らかにした。

 怒っているのは、以下の記事についてだ。

<『週刊朝日』(4月12日号)掲載「石原慎太郎代表の復帰と賞味期限切れで焦る橋下市長」の抜粋記事>
その橋下氏をとり巻く環境が地元・大阪で変わりつつあるという。先の衆院選の大阪小選挙区では出馬した14人中12人が当選(2人も比例復活)した「橋下王国」だが……。
「もう橋下さんでは視聴率がとれない。議員団とのドタバタ劇に大阪人は興味を示さない。先日、大阪市が全職員に行った組合活動のアンケート問題を取り上げたけど、視聴者の反応はニブかった。大阪でも物事をうまく動かせなくなっている」(在阪テレビ関係者)
一方で、橋下氏の露出が増えているのが、“古巣”のバラエティー番組だ。3月10日には「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)に約5年ぶりに登場し、23日には「たかじんNOマネーGOLD」(テレビ大阪)に出演した。
「焦ると政治家はネット番組ややわらかい番組に出たがるものです」(議員秘書)
(※「.dot」掲載 『週刊朝日』2013年4月12日号記事(*リンクbit.ly/11zXxNL)の一部)
 橋下市長の言い分を、彼のツイッターを引用しながら見ておきたい。

◎4月6日 橋下徹@t_ishin
週刊朝日が僕に対して重大な人権侵害をやったのはつい半年前。そのことで公人チェックを緩める必要はないが、せめてそのような大失態をやったなら、真正面からの政策批判かルール違反行為の追及で攻めて来いよ。それを、こんな人をバカにしたような記事を載せやがって。 posted at 14:32:48
報道の自由、表現の自由が民主主義の根幹だからと思って黙っていたが、こういう人権侵害週刊誌は、性根が腐っている。黙っていたら調子に乗るばかりだ。公人になってから報道の自由は絶対的に尊重していたが、こりゃダメだ。人権侵害週刊誌の週刊朝日に対して法的手続きを執ります。 posted at 14:44:10
今回の茶化し記事についてではないです。過去の人権侵害記事について、民事、刑事の法的手続きを執ります。ほんと週刊朝日もバカだよねえ。 posted at 14:55:37
こっちは慰謝料は一銭たりとも何も受け取ってない。やつらは人権侵害行為で売り上げ増、利益増収。これはやっぱり公正じゃない。きちんと慰謝料請求する。そして刑事告訴もする。普通なら、こんな記事くらいで目くじら立てない。週刊朝日は過去に重大な人権侵害行為をやった。それを忘れるな。 posted at 23:35:35)
(橋下徹氏ツイッターより http://twilog.org/t_ishin/date-130406)

◎4月7日 橋下徹@t_ishin
アメリカで人種差別を大々的にやった企業が存続できるか。ヨーロッパでナチスや優生思想を肯定し人種差別を大々的にやった企業が存続できるか。そんなのあり得ない。即廃業だ。それに比べれば日本は人権侵害には大甘だ。こんな状況の日本で、人権を尊重しろと言い続ける朝日新聞グループ。お笑いだよ。 posted at 11:26:24
朝日新聞をはじめとする朝日新聞グループは、本来なら即廃業に追い込まれるほどの人権侵害をやってのけた。ところが日本国は人権侵害に甘いから朝日新聞はまだ生き残っている。人権侵害に甘い環境に朝日は救われた。朝日が理想とする人権を尊重する社会が実現したら朝日は廃業だよ。分かっているのかね posted at 11:30:37
繰り返し言う。朝日新聞グループと俺は、加害者と被害者の関係なんだ。これは俺が生きている限り、そして俺の子孫が生きている限り付きまとうことだ。それだけのことをしたんだ。そこを忘れるな。もう一度、グループあげて、被害者への謝り方、償い方を研修しろ。いつもあんたらが紙面で言ってることだ posted at 11:44:28
(橋下徹氏ツイッターより http://twilog.org/t_ishin/date-130407)

■差別記事事件の解決は差別撤廃記事ではかるべきだ

 橋下氏が問題にした『週刊朝日』(4月12日号)の記事は、報道で取り上げられる機会が減り、バラエティ番組に出る橋下氏を茶化した内容だが、当該記事自体は、本来ならとりたてて問題にするようなものではない。

 記事の中で、太陽の党との合併の是非、桜宮高校体罰事件の対応のまずさ、大阪市職員の組合活動アンケートについて下された不当労働行為認定など、下降気味の人気に焦りを感じて、「バラエティ番組」に出演する機会が増えたと書いているだけだ。これだけでは、ほとんど抗議する材料にもならない。

 そこで持ち出されたのが、橋下氏自身の社会的糺弾によって、完全勝利した昨年10月26日号『週刊朝日』差別記事事件ということなのだろう。

 結論から先に言えば、今回の橋下氏の言い分は、筋違いの的外れの抗議というほかに言葉がない。これでは社会的支持を得ることはできないだろう。

 <差別―被差別>の関係が、10月26日号『週刊朝日』差別記事事件では問われたのであり、加害者と被害者という問題の立て方は、誤解をまねく。人権侵害事件には、差別した差別者と差別された被差別者がいる。しかし、より重要な視点は、差別をさせている社会構造が存在しているということだ。そして、人権侵害事件の解決の基本は、差別された被害者が、糺弾を通して、差別した差別者の反省の上、ともに差別的社会構造の変革に立ち向かうということであり、差別者への慰謝料請求などでは、真の解決は望めない。

 11月12日に第三者委員会の「見解」を受け入れ、橋下氏に謝罪した『週刊朝日』側も、そのことを理解した上の謝罪・反省ではなかったのか。それにしても、茶化されたことに怒り、いったん謝罪を受け入れた昨年の差別記事事件を蒸し返すというのは、筋の通らない抗議というほかない。腹を立てる前に、糺弾をしっかり行わず矛を収めた、自己の不明を恥じるべきだ。部落解放同盟中央本部は、『週刊朝日』差別記事糺弾を、現在も継続している。

 橋下氏の側が、『週刊朝日』と朝日新聞グループを再度、批判するのであれば、部落差別にもとづく人権侵害を撤廃するために、「ハシシタ 奴の本性」記事以降の半年間、どんな誌(紙)面を作ってきたかを問うべきである。

 あれこれの瑣末な記事を人権侵害=部落差別と結びつけて、相手を屈服させようという姿勢は、糺弾の社会的価値を貶める行為と言わねばならない。
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