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第188回 大阪府警機動隊員の「土人」発言は全琉球人に放たれた暴言

 

 

○「ボケ、土人が」――大阪府警機動隊員の差別発言

 

 2016年10月18日午前、沖縄県東村・高江のヘリパット基地建設反対運動を闘っていた沖縄住民に対し、大阪府警から派遣されている機動隊員が「どこつかんどんじゃ、触るなボケ、土人が」と度し難い差別発言を行ったことが判明した。

 音声も確かで、暴言を吐いた機動隊員の顔も鮮明に映っている動画は、観るのも聞くのもおぞましい。

沖縄を構造的に差別してきた「本土」政治中枢部の沖縄に対する心性を、この機動隊員は「土人」という差別的言葉で言語表現したのだ。

 さらに、別の動画では、同じ大阪府警機動隊員が、「黙れ、こらシナ人」と反対運動の沖縄住民に罵声を浴びせているグロテスクな場面も映し出されている。

 「本土」から東京警視庁、千葉県警、神奈川県警、大阪府警、福岡県警など、500人とも800人ともいわれる機動隊員を派遣している理由もはっきりした。

 

○沖縄県警を含む、全琉球人に対して放たれた暴言

 

 沖縄タイムズ(10月19日)は「警察官による『土人』発言は歴史的暴言である。警官は発言者を特定し、処分し、その結果を発表すべき」と、強く追及している。

 この差別発言は、ヘリパット反対派住民だけでなく、沖縄県警を含む、全琉球人に対して放たれた暴言である。日米地位協定、刑事特別法など、沖縄の人々の基本的人権と政治的、社会的権利を否定した、構造的差別が意識的に言語化されたものだ。

 大阪府警の機動隊員は、ついうっかり「土人」と差別発言したのではない。目的意識的かつ、攻撃的な憎悪感情を持って、沖縄住民に「土人」と言い放ったのだ。

 

○明治中央政府の差別的文書――琉球国王を「酋長」、住民を「土人」と呼称

 

 しかしながら、これは、いち機動隊員の暴言ではない。

 メディアは、「土人」という植民地的目線での人種差別的暴言が、「本土」の機動隊員から沖縄県民に向かって投げつけられたと正確に報道すべきだろう。

 

 「土人」という言葉には、沖縄が歴史的に強いられてきた構造的差別の現実が反映されている。 

北海道に住むアイヌ民族に対して、1899年に成立した「北海道旧土人保護法」(1997年アイヌ文化振興法の成立に伴って廃止)という侮辱した法律に見られるように、「土人」として蔑まれ、差別されてきた歴史はよく知られている。

 同様に、琉球民族に対しても、明治初期には琉球国王に対し「酋長」、住民に対しては「土人」と、公式文書で差別的に呼称してきたという歴史的事実がある。

 

○「土人」はなぜ差別語なのか

 

 「土人」という言葉は、もともとは「土地の人びと」「現地の人びと」を意味する言葉で、異民族、外国人に対する蔑称は「夷人」だった。

 ところが、明治以降、「土人」という言葉の意味は、文明に取り残されている「未開で野蛮な異民族」という人種差別的な内容をもつようになった (拙著『最新 差別語・不快語』「土人はなぜ差別語となったか」198-199頁参照)

 

○「土人」は沖縄への構造的差別が意識的に言語化されたことば

 

 沖縄は、明治初期まで琉球王国という独自の国家があった。それを明治政府は一方的に解体し、統合した。明治中央政府は、最後は軍隊を送り、琉球王を無理やり東京に連行し、沖縄県を設置した。日本全体の利益のために沖縄を犠牲にするという構造的差別が、このとき組み込まれたのである。

 

 現在も、そのときと同じことが、普天間辺野古基地移設問題やヘリパット基地建設の強行でくり返されている。先の大戦では、沖縄は米軍との地上戦の〈捨て石〉とされ、12万人の沖縄住民が犠牲になった。沖縄戦が長引き、犠牲が大きくなったのは、本土決戦に備え、長野・松代に巨大な地下壕の大本営を完成させるための時間稼ぎだったことも明らかにされている。

 

 戦後も、米国基地として沖縄が〈差し出さ〉れ、今も在日米軍基地の74%が沖縄に集中させられている状況を、中央政府は解決しようとしない。

 

 「土人」という差別語は、こうした「本土」の沖縄に対する構造的差別を表象する言葉であり、全琉球民族に対する差別の歴史と実態が塗りこめられた生きている言葉なのだ。

すなわち、「差別語にはそれが意味する差別的な実態が反映されている」ということなのだ。(拙著『最新 差別語・不快語』参照)

 

○「土人」を使わなければよかったのか

 

 報道は「土人」という差別語のみに集中しているが、一つ付け加えておく。

 

 沖縄県警は事実関係を認めたうえで、「土人」は「差別用語で不適切な発言だった」とコメントしているが、「差別語である『土人』と発言したから問題なのではい。 たとえ「触るな、ボケ、沖縄人」と発言したとしても、基地建設を強行する場面で吐かれたこの文脈においては、沖縄人民を侮辱した差別表現なのだ。

 

 

○沖縄への差別意識が如実に表れた差別発言

 

 戦前、日本は、委託統治していた南洋群島の住民を「土人」と呼んで蔑んでいたこと、さらに南洋群島に移住させられた日本人の多くが沖縄出身者であったという事実は、何を意味しているのか。

 今回の「土人」「シナ人」という差別語を使った差別発言は、徹底に糾弾されなければならない。まずは、大阪府警に対して、つぎに発言した機動隊員に対して、そして警察庁に対しては国会で追及し、糾弾もしなければならない。

 

[追記―19日菅官房長官会見について]

 この大阪府警機動隊員による「土人」発言は、沖縄・高江のヘリパット基地建設阻止闘争現場における、法を無視した国家権力の横暴がいかに非道であるかを、期せずして、「本土」国民に知らしめることとなった。

 しかし、菅官房長官は、10月19日会見で、「不適切な発言」と苦言を呈したものの、ヘリパット基地建設は「法に基づいて適切に進める」とうそぶいている。

この「土人」発言が不適切であるなら、その差別語に塗りこめられた沖縄に対する構造的差別の実態、つまりヘリパット基地建設そのものが” 不適切な政策”なのだ。

 会見で、記者から「機動隊の発言は県民に対する潜在的な差別意識の表れではないか」と質問されたことに対し、「それ(差別意識)は全くないと思う」と平然と応えている。

 機動隊員の「土人」発言は、菅官房長官を含めた、永田町の政治権力者の”潜在的な差別意識の表れ”以外のなにものでもない。

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