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第55回 宗教的文化を大切に
■続・大阪地裁の差別判決
 今週は、とりたてて取り上げるような差別(表現)事件はなかったが、先週とりあげたアスペルガー症候群の男性被告に対する大阪地裁の裁判員判決で出された極めて差別的な判決に対し、朝日新聞8月20日付朝刊など、大手マスコミを始めさまざまな関係団体から抗議の声が高まっている。
 また、朝日新聞8月20日付の夕刊には「我々を忘れないで ハンセン病基本法 施行から3年」という記事で、現状の法制度の問題点を洗い出している。
ハンセン病問題基本法は、国に療養所での医療と介護に必要な医師や看護師、介護士を確保する努力を定めているが、厚生労働省は国家公務員の削減という「閣議決定」をたてに、療養所を対象の例外とする要求に応じない。「我々に残された時間はあまりない。命をかけて闘う」。(朝日新聞8月20日付)
 いま、法案整備がなされている障害者差別禁止法案を含め、障害者総合福祉法案にも、この“努力”目標規定を織り込むことによって、実施をサボタージュしようとする官僚の策動を許してはならない。

■宗教への侮辱
 もう一つ、8月23日に次のような記事が掲載された。
【仏像にキスして記念撮影、フランス人観光客3人に有罪判決 スリランカ】
スリランカで21日、仏像にくちづけをしながら記念写真を撮影したとして、フランス人観光客3人に執行猶予付き禁錮6月、罰金1500ルピー(約900円)の有罪判決が言い渡された。…(中略)…仏教徒が国民の大多数を占めるスリランカは仏像に敬意を払わない外国人に敏感だ。外国人観光客は控え目な服装でなければ寺院に入ることができない。2010年3月には露出度の高い装いの女性たちが仏像の前に登場するプロモーションビデオを製作したと批判された米歌手のエイコン(Akon)が、スリランカから査証発行を拒否された。
(AFPBB News AFP=時事 8月23日(木)13時0分配信)
 たんなる文化的、宗教的土壌の違いから生じた“ハレンチ罪”と考える向きもあるかもしれないが、問題の本質はそこではない。こうした問題は、仏教国だけでなく、イスラム国家の方が、より深刻な事態に発展することが多いように思う。
 少し前の話だが、2010年8月31日に「ラマダン(断食月)」に毎晩流される「モスクのコーランがうるさい」と、モスクに乗り込んでスピーカーのケーブルを抜いたアメリカ人がインドネシアで逮捕されるという事件が起きている。罪状は「神に対する冒涜」で、有罪になれば禁固5年に科される可能性もあるという。
「AFPBB News」
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2752258/6128546
 この事件で思い出されるのは、2005年のデンマーク日刊紙に掲載されたイスラームの預言者ムハンマドの風刺漫画をめぐる事件だ。(事件詳細は『差別語・不快語』P216を参照)

 「ユランズ・ポステン」紙にムハンマドをモチーフにした12種の風刺画を掲載したことでムスリムの怒りをまねき、シリアのデンマーク大使館などが放火されるという国際的な事件になった。

 同様に、いまでも気軽に「ここは○○のメッカ」などという表現をよく見聞きするが、すでに1995年に「風俗のメッカ」という表現で日刊ゲンダイが、2007年には「ここは盗撮のメッカ」という発言を放映したテレビ朝日の「やじうまプラス」が、イスラム団体から抗議され、謝罪している。

 メッカはイスラムの聖地を意味し、ムスリムにとって大切な場所を示す言葉であるため、ネガティブな表現で使うことは侮辱と受け取られることがある。

 仏教であれ、イスラム教であれ、神聖なものとされているものや人を安易に貶めることは、厳しい批判と怒りを呼び起こすことに注意しなければならない。単に宗教的文化の違いといってすまされる問題ではない。
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