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第54回 発達障害への無理解と偏見の差別判決
■「受け皿がないから刑務所に収容すべき」とした大阪地裁
 7月30日に大阪地裁で、発達障害と認定された被告に対して、求刑を上回る懲役20年の判決が出されたことに抗議の声が広がっている。

 判決では、〈殺人罪に問われた被告を発達障害の一種、アスペルガー症候群と認定。被告が十分に反省していないことや障害に対応できる受け皿がないことなどを理由に「許される限り長期間刑務所に収容することが社会秩序の維持につながる」〉(朝日新聞8月9日朝刊)としている。

 抗議の声がわき起こるのも当然の、時代錯誤もはなはだしい、障害を理由にした差別的な判決と言わざるを得ない。

 発達障害に対する社会的無理解と偏見が存在する中で、日本自閉症協会などの当事者団体と支援団体、そして日本児童青年精神医学会が、発達障害に対する正しい知識の普及と社会的環境の整備をめざして活動していることをまったく無視した、不当判決だ。

 しかも、あろうことか「被告が十分に反省していないこと」及び「障害に対応できる受け皿がないこと」を理由にした保安処分的観点から、求刑16年を上回る懲役20年の判決を出すにいたっては、発達障害の特性を理解しない差別判決と言うほかない。

 これでは「発達障害者=犯罪者予備軍」と認定したに等しく、本来、社会福祉政策の貧困さに問題があるにもかかわらず、社会の受け入れ態勢の不備を理由に、障害者を長期隔離収容しようとする厳罰化の判決は、とうてい認めることはできない。

 実際、8月8日、先の日本自閉症協会など3団体が地裁判決に対して「障害への無理解と偏見があり、差別的な判決だ」とする緊急声明を、それぞれ発表した。声明では、適切な支援が少ないという社会的な問題を被告人個人に転嫁し、厳罰に処することは許されないと批判している。

■「発達障害は親の愛情不足」とした維新の会条例案
 さらに、この判決が裁判員裁判であったことも、重視する必要がある。今年(2012年)5月に、大阪維新の会が出した条例案、「家庭教育支援条例(案)」の「発達障害、虐待等の予防・防止」という章の中で、下記のような記述があり、批判が相次いだ。
第4章 (発達障害、虐待等の予防・防止)
(発達障害、虐待等の予防・防止の基本)

第15条
乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因であると指摘され、また、それが虐待、非行、不登校、引きこもり等に深く関与していることに鑑み、その予防・防止をはかる
(大阪維新の会  大阪市会議員団  平成24年5月 家庭教育支援条例〈案〉)
 発達障害と虐待を同列に論じているばかりか、非科学的な親の愛情不足が発達障害の原因とする偏見が社会的に広がっていることの一端が明らかになった。
 その意味でも、裁判官はもとより、裁判員にも正確な発達障害(今回の場合はアスペルガー症候群)についての医学情報と知識を提供できる体制も必要だと思われる。
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