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第52回 オリンピックと人権
■人種差別発言でギリシャ代表を外される
 7月27日からロンドンオリンピックがはじまる。それに先立つ25日深夜に行なわれた女子サッカー日本VSカナダ戦に日本が勝利し、日本選手団全員の士気を鼓舞した。
 しかし、一方で、26日の朝刊各紙に「〈ロンドン五輪〉ツイッターで人種差別発言 ギリシャ陸上選手、代表外れる」といった見出しの記事が載っている。
ロンドン五輪:パパフリストゥ選手、差別発言で代表外れる

【ロンドン小坂大】ギリシャ五輪委員会は25日、ツイッター(短文投稿サイト)で人種差別発言をしたとして陸上女子三段跳びのパラスケビ・パパフリストゥ選手(23)をロンドン五輪の代表から外した。AP通信などが伝えた。

パパフリストゥ選手は「ギリシャにはアフリカ人が多くいるので、西ナイルの蚊はたくさん自分の国の食べ物があっていいわね」と投稿。しかし、この発言を読んだ人から「もし本気でツイートしたなら、すぐに国に送り返すべきだ」などと批判が殺到し、コメントは削除された。

ギリシャ五輪委は「五輪精神に反する」と説明。パパフリストゥ選手は「人種差別をするつもりはなかった。下品な冗談を心からおわびしたい」とツイッターで謝罪した。

(毎日新聞 2012年7月26日)
 パパクリストウ選手の出身国ギリシャの首都アテネでは7月、蚊を媒介とする西ナイル熱の感染で男性1人が死亡、少なくとも5人が感染している。さらに、ギリシャにはアフリカ諸国からの移住労働者が多く、彼らへの排外主義や差別があとをたたないという問題が、この事件の背景にある。同選手の発言は、アフリカからの移民をからかい、移民排斥を掲げる極右政党への支持を表明するようなつぶやきをしたと批判されたのである。

 これしきのことで代表を外すのはやりすぎで、選手がかわいそうと感じる日本人は多いのかもしれないが、それは日本人の人権感覚の鈍さを示すだけであり、欧米では当然の処置と言わねばならない。

 古代アテネで開かれていたオリンピック期間中は、たとえ戦争(紛争)状態にあったとしても、一時休戦の約束が交わされた。その意味では、古代より戦争状態の停止、すなわち平和な環境の下で、オリンピックは開催されることを条件付けられている。戦争が最大の人権侵害であることは、言を俟たない。

 つまり、平和環境とは、人権が尊重されている環境と言い換えることができる。

 近代オリンピック憲章も、その意思を受け継ぎ、「オリンピズムの根本原則」の中で、次のように記している。
【オリンピズムの根本原則】
2.オリンピズムの目標は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。

4.スポーツを行うことは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神によりスポーツを行う機会を与えられなければならず、それには、友情、連帯そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる。

6.人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピック・ムーブメントに属する事とは相容れない。
■女子選手はエコノミー座席、男子はビジネスシート
 7月24日の『サンスポ』にも〈女子「エコノミー」は性差別〉と題した記事が掲載された。これもオリンピック・ムーブメントとは相容れないことだ。
女子「エコノミー」は性差別
飛行機の座席で豪州バスケット代表 「なでしこジャパン」と同じケース

豪州のバスケットボール五輪代表が開催地ロンドンに向けて利用した飛行機の座席をめぐり、男子がビジネスクラスを利用したのに対し、金メダルの期待もかかる女子がエコノミークラスだったことが性差別に当たると波紋を呼んでいる。

地元紙エイジによると、ランディ・スポーツ相(閣外相)は「男女とも等しく国を代表している。異なるクラスにすべきではない」と批判。同国バスケットボール協会は20日、遠征時の規定を見直す考えを示した。

この問題では、ロンドン五輪に出場する日本のサッカー代表についても、昨年の女子W杯で優勝した「なでしこジャパン」がビジネスクラスではないのに、男子はビジネスだと欧米の主要メディアなどが取り上げた。

バスケットボール協会は男女間の平均身長が20センチ近く違うなどと説明したが、エイジ紙は男子より背の高い女子選手もいると反論している。

(『サンスポ』2012年7月24日)

 そういえば、前回の北京オリンピックのとき、日本派遣団の協会役員はビジネスクラスで、競技する選手はエコノミークラスという差別が問題になったが、なんの進歩もしていないと言わざるを得ない。
| 連載差別表現 |