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第34回 橋下徹バッシング報道から再び部落差別を考える(3)
 前回に引き続き、第3回目の今回は、『週刊新潮』『週刊文春』の2誌の記事を取り上げ、考えてみたいと思う。

・『週刊新潮』(2011年11月3日号)

特集:『血の雨が降る「大阪決戦」!「同和」「暴力団」の渦に呑まれた独裁者「橋下知事」出生の秘密』

『週刊新潮』の記事は、部落問題に関わる個所はほとんど『新潮45』をベースにしたもので、目新しいものは何もない。それはコメンテーターとしての上原善広を、いわば免罪符的に活用しているところにも透けて見える。曰く「自らも部落出身者であることを公表しているノンフィクション作家の上原善広」と記すことによって、予想される抗議を企業防衛の観点から防御しているつもりなのであろう。次号でも、上原善広のコメントを記述するときには、同様の“肩書き”をつけているところからも、「部落の出身者が書き、コメントしているのだから大丈夫」という浅薄さがうかがえる。

 今回、スキャンダラスに特集を組んだ企図は、つぎのような記事冒頭のリードが全て物語っている。
「あいつのオヤジは、ヤクザの元組員で、同和や」
こう語ったのは、橋下知事の叔父、橋下博氏である。スター知事の生い立ちにまつわる衝撃的な発言。これを掲載した月刊誌『新潮45』11月号は大きな反響を呼び、大阪では売り切れ店続出で、緊急増刷された。知事への関心の高さ故だが、その彼は今やヒトラーとまで呼ばれる存在になった。独裁者のルーツを辿る。

(『週刊新潮』11月3日号)
『新潮45』は、発売3日で、紀伊國屋書店梅田本店で100冊、ジュンク堂書店天満橋店60冊、ブックストア談新大阪店20冊が各々完売。5000部の増刷をしたという。(新潮フラッシュニュースより)

 問題点の1つは、橋下氏が被差別部落出身ということが何故“衝撃的”であり、醜聞なのかという点。そして2つ目は、被差別部落に対する社会的差別が厳存する中で、「苛烈な言動の源泉を追う」という理由で、彼の「出自」をあばくことが許されるのかという点だ。

 政策や独裁的手法と被差別部落出身がどう結びついているのかは、ここでは論証の課題ではない。部落差別に基づく冤罪である狭山事件をはじめ、過去、幾多の動機不可解な猟奇事件と、被差別部落が結びつけられ(※参照)、被差別部落に対する社会的偏見を強め、くやしく、腹立たしい思いをしてきた出身者の感情を共有できない、エセ「出身者」のたちの悪い戯文と言わざるを得ない。

※主な事件は以下の通り。
①狭山事件(1963年)部落差別に基づく冤罪
②グリコ・森永事件(1984年)食肉関係者、部落への見込み捜査
③オウム真理教事件(1995年)麻原(松本智津夫)、部落出身者説
④神戸小学生殺人事件(1997年)犯人部落民説、在日コリアン説
⑤和歌山毒入りカレー事件(1998年)犯人部落民説
⑥音羽“お受験”殺人事件(1999年)犯人部落民説
⑦京都伏見小学生殺人事件(1999年)犯人部落民説

さらに3つ目の問題点は、2つ目と通ずるところもあるが、「その頃には自己のルーツについて複雑な思いを抱いていたかもしれません」と書いているが、何の検証もされていないことを、書き手が勝手に推測している点だ。
橋下氏の性格や政治的手法と彼自身のルーツについての「複雑な思い」を直接インタビューせずに書き散らすところに、トップ屋的本性が現れている。


・『週刊文春』(2011年11月3日号) 特集:『橋下徹42歳書かれなかった「血脈」』

『週刊文春』も期せずして、ほぼ『週刊新潮』と同様の内容だが、トーンは幾分低い。冒頭のリードは、
変節と裏切り、そして対決構造を作って煽る。橋下知事の政治手法は、どこに由来しているのか。同和地区で育ち母子家庭だったとは本人の言だが、父とその弟は暴力団組員だった。さらに橋下家の「血脈」を探ると、暴力団との接点は大阪維新の会とも交錯していたのだ。

(『週刊文春』11月3日号)
とあり、特集の構図は『週刊新潮』と同じといえる。

両誌は、橋下前府知事の実父が被差別部落出身者という事実を、スキャンダラスに明らかにすることによって、一体何を企図していたのだろうか。たかが、選挙につきもののネガティブキャンペーンのひとつとして、見過ごすことのできない問題を孕んでいる。事実、過去、幾度となく対立候補からその出自を公にされ、涙をのんだ被差別部落出身の各級議員候補がいた。被差別部落出身者だけではない。1983年の総選挙では、旧東京2区から立候補していた新井将敬氏が、自民党候補者の石原慎太郎・現東京都知事陣営から、選挙ポスターに“元北朝鮮人”という黒いシールを貼り付けるなどの民族的差別(ネガティブキャンペーン)を張られ、落選している。

(つづく)
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