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第31回 岩波の就職差別のことなど

今週はニュース解説的に差別問題関連事件をとりあげる。

①岩波書店の社員募集要項問題
 岩波書店が、2013年度の社員募集要項で、社員や著者の紹介を応募条件としたことに波紋が広がっている。岩波書店の言い分は、「数人の採用予定に対して応募は1000人を超え、応募者を絞り込むための措置」(朝日新聞 2月8日夕刊)としている。そして、「あくまで応募の際の条件で、採用の判断基準ではない」としているが、意味が通らない強弁に過ぎない。年齢・性別などを限定して採用することは、すでに雇用対策法や男女雇用機会均等法に接触する行為とみなされている。

 昨年の7月に、この連載の第6回でも触れているが、キャノンが2012年度の新卒事務採用(夏期)説明会のインターネット予約受付画面に、「事務系(東京大学の方)」「事務系(一橋大学の方)」と、有名上位大学名が明記された予約枠を並べていたという事件があった。

 <「採用ターゲット校以外はセミナーの予約が取れない」「セミナーを抽選制にしてターゲット校の学生しか当選させない」などの学歴差別はよく行われていると人材コンサルタントの常見陽平氏は指摘する。しかし、今回の件については、「ここまで露骨に可視化されたのはなかなかない」(「連載 差別表現」第6回より)>と、驚いている。

 <今日の日本で「公に許されている」唯一の社会的差別が、“学歴差別”であることは、論をまたない。部落差別、障害者差別、性差別、年齢差別、宗教差別、民族差別、人種差別は、公然・非公然かつ、密かに行われているが、少なくとも、公的(法的)には許されない。しかし、学歴差別に関して、世論は無頓着というより、むしろ積極的だ。

 <日本の学校教育制度と受験産業が作り出した社会システム(社会的差別)を根底に持つものであり、就職差別事件として、当該運動団体は取り組むべき課題ではないかと思う。(「連載 差別表現」第6回より)>と書いた。


 話は岩波に戻るが、岩波書店の社員に東大出身者が多い事実はよく知られている。以前から社員の推薦や著者(多くは社会科学系の大学教授)の紹介が必要とされていたとすれば、今回の岩波の処置は、学歴差別を根底に持つ、就職差別のひとつと言わねばならない。


②自殺対策キャッチフレーズ「GKB47」問題
 自殺対策強化月間のキャッチフレーズを、アイドルグループ「AKB48」になぞらえて「GKB47」としたことに批判が起こり、参議院の予算委員会でも取り上げられる事態となり、結局キャッチフレーズは「あなたもゲートキーパー宣言」となった事件。
 <GKBは「ゲートキーパー(門番)・ベーシック」の頭文字で、自殺予防に取り組む門番を47都道府県で増やす意味>(朝日新聞 2月7日朝刊)ということだが、村木厚子政策統括官は、「ゲートキーパーという言葉は自殺対策で大変大切にされてきたが、なかなか認知されない」ので、興味を引くように名付けたと経緯を語っている。しかし、自殺対策に取り組む民間団体は、「自殺問題をバカにしている」「『GKB』は若者の間でゴキブリを意味する」などと抗議声明を出し、撤回を求めていた。
 どうも、厚生大臣官房にいる電通からの出向者が、秋元康の了解を得て標語にしたと言うことだが、センスの善し悪しの問題ではなく、職業的感性が希薄化していることが問題。


③その他
○柏の劇団が、ご当地アイドル名に「ホットスポット」と名付け、さらにそのデビュー曲名を「1ミリシーベルトの微熱」としていた事が発覚し、中止に追い込まれた事件。(サンスポ 2月10日)

○自民党の石原幹事長の「胃ろう、エイリアン」発言事件。

<テレビ番組の中で、病院で腹部に穴をあけて胃に管を入れて栄養を送る「胃ろう」の措置を見学した際の感想として、「意識がない人に管を入れて生かしている。何十人も寝ている部屋を見たときになにを思ったかというと、(映画の)エイリアンだ。寄生したエイリアンが人間を食べて生きているみたいだ」と述べた。終末期医療の問題点を指摘するなかでの発言だが、映画「エイリアン」を医療措置の引き合いに出したことで、患者の家族らの批判を招く可能性がある>

と、2月7日の朝日新聞朝刊が報じている。1999年に、都知事で父の石原慎太郎が、府中の重度知的・身体障害者療養施設を視察した際に発した、「ああいう人ってのは人格あるのかね」に通ずる不謹慎で、差別的な発言と言わざるを得ない。「親が親なら子も子だ」と、世間の顰蹙を買う。

○安住財務大臣の「死んだ土地」発言。

<東京電力福島第一原発事故の放射性物質で著しく汚染された土地の活用法をめぐる質疑の際に「死んだ土地」と表現した。事故で避難した住民への配慮を欠く発言として反発を招きかねない。>

と、サンスポ(2月11日)が報じている。一連の大臣による、不用意で配慮を欠いた不適切発言のひとつ。自民党も民主党も、若手の主力がこれでは先が思いやられる。

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