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第30回 人権救済機関の設置
 昨年8月、当時の江田五月法務大臣の下で、法務三役が提出した「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」の内容がひどい。

 すでにこのウェブ連載の第8回でふれているが、問題点は以下の四点に要約することができる。

(1)人権委員会を法務省の外局としている点
(2)人権委員会の調査機関と救済に向けた勧告に法的強制力がない点
(3)差別事件(差別発言を含む)を起こした者に対する罰則規定がない点
(4)人権委員会の地方における活動は、地方法務局と現行の人権擁護委員を活用するとしている点
 

まったくのザル法であり、今回上程された法案にはメディア規制(2005年提出の法案に含まれていた)がなくなっているというが、たとえば週刊誌を訴えるときに、名誉毀損ではなく人権侵害救済法にもとづいて行うことが可能だ。

 法案提出時に、江田法務大臣が自身のブログの中であきらかにしていたように、「一部の人(当事者である被差別マイノリティのことか―筆者註)の思いだけで提案して、頓挫しては困る。野党(自民党)の理解を得ることが大事」と述べており、まさに“実を捨てて名を取る”というたぐいの策略と言わねばならない。

 すでに3月に国会上程し、可決の見通しが語られており、法務省も50億の予算設置をとるという。

 もう一度言う。パリ原則にのっとった人権侵害救済機関とは、下記のような実効力を持った組織のことを言うのであり、調査権限と罰則規定を持ち、救済に向けた法的強制力を持たない「人権委員会」では、意味がない。

「『権限の範囲内の状況を評価するのに必要であれば、いかなる者からも聴取し、いかなる情報や文章も入手する』『特に、機構の意見及び勧告を公表するため、直接又は報道機関を通じて、世論に働きかける』『調停により、又は法に規定された規約の範囲内で、拘束力のある決定によって、また必要な場合は、非公開で友好的な解決を追求すること』(パリ原則)」

 参考までに、人種差別禁止法をもつフランスの例をあげておこう。
クリスチャン・ディオールデザイナー(ジョン・ガリアーノ氏)
ユダヤ人差別事件

 2011年、フランスの高級服飾ブランド、クリスチャン・ディオールの英国人デザイナー、ジョン・ガリアーノ氏が、パリのユダヤ系住民が多い地区のカフェで酒に酔い、「ヒトラーが大好きだ。お前たちのような奴らは死んでいたかもしれない」と暴言を吐き、刑事告訴された。この差別発言によって、ガリアーノ氏はディオールを解雇。9月8日、罰金65万円、6ヶ月の執行猶予付有罪判決がパリ裁判所から出される。

(『差別語・不快語』P213 参照)
 実効力のある人権委員会とは、こういう組織のことを言う。

 ちなみに、障害者の権利をめぐっても、2月9日の新聞記事によれば、長妻厚生相が廃止を表明した悪法「障害者自立支援法」を一部訂正して、存在させる方向が、官僚によって画策されている。民主党政権は、すでに官僚に骨抜きにされていると言わねばならない。

 2月1日には、師岡康子さんたちが呼びかけて「わたしたちが使える人権機関を 2・1市民集会」が、被差別マイノリティのさまざまな個人・団体が参加して開かれ、翌2月2日には、参議院会館内で「こんな人権委員会は要らない――わたしたちが使える人権機関を!」と題した院内集会も開かれている。

 この集会を主催する実行委員会、参加団体は以下のとおりだ。

<実行委員会参加団体(順不同)>
国内人権機関と選択議定書を実現する共同行動 / 公益社団法人アムネスティ・
インターナショナル日本 / 石原都知事の女性差別発言を許さず、公人による性
差別をなくす会 / レインボー・アクション / スペースアライズ / I女性会議

 不思議なことに、部落解放同盟の名前も、反差別国際運動(IMADR)の名前も見当たらない。どうしたことか?
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