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第27回 山岡担当相の度重なる問題発言、なにが問題か
<山岡賢次国家公安委員長兼消費者担当相は5日、内閣府職員への年頭訓示で「近々、ユーロは破綻するんじゃないか。中国(経済)のバブルも破裂する可能性がある」との見方を示したうえで「金融・経済の大津波がやってくる」と述べた。欧州債務危機への懸念を強調する意図があったとみられるが、担当でもない閣僚が具体的な根拠を示さずに他国通貨の破綻を予言し、それを「津波」に例えたことに批判が出そうだ。>

(毎日新聞1月5日)
一般人の発言なら、酒場談義のノリでうんちくをたれた戯言、ですむのだろうが、問題は「金融・経済の大津波がやってくる」と比喩的に表現する政治感覚の鈍さに、政治家としての資質が問われている。

 3月11日の大災害の傷が癒えない時期に、公的な訓示で、比喩的といえども表現するべきではないだろう。

 本来、比喩的に「大津波がやってくる」という表現は、それ自体は差別表現とは言えない言い回しだが、問題はTPO、つまり、状況判断の甘さと被災者に対する感性の鈍さなのだ。

 例えば、「猫の手も借りたい程忙しい」という表現がある。よく使われる言葉だが、20年程前、「“超”放送禁止落語会」差別事件というのがあった。部落差別や障害者差別を笑いのネタにした、極めて悪質な落語会で、解放同盟の糾弾闘争本部で取り組み、抗議・糾弾した差別表現事件だ。

 演者は、立川平成・立川談之助・立川志らく・春風亭勢朝・立川談春・朝寝坊のらくの計6名で、責任者は立川談之助。企画は立川平成・立川志らくを加えた3人だった。

 その「落語会」の中で、『典子は、今』(1981年・松山善三監督)という映画の主人公を揶揄し嘲笑する内容があった。サリドマイドの副作用によって、両腕がない状態で生まれ、また、右目の視力もほとんどなかった。その両腕欠損という障害を持ちながらも、足と足指を使って文字を書く、彼女の日常生活を描き、社会的に大きな反響を呼んだ映画だ。

 それに対し、「猫の手も借りたい典子」と演じて笑いをとる行為に、解放同盟は強く抗議した。「猫の
手も借りたい」だけならばなにも問題がないが、障害による独特の動作に対しての嘲笑は、許されることではない。「“超”放送禁止落語会」の場合はとくに、TPOをわきまえず、無意識に行ったのではなく、意識的かつ確信犯であるところにも、事の重大さがあった。

 同様に、ガンの放射線治療を受け、頭髪が抜けてしまった患者の前で、“ ハゲ ”を話題にしたギャグを言えるか、ということでもある。

 一般的な表現でも、このように状況によって相手を傷つける差別表現となることがある。社会的・文化的・政治的客観状況を顧慮し、対象に配慮した言語遣い、表現をつねに心掛ける必要があるだろう。
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