最新連載記事
カテゴリー
月別

記事検索
第192回ウェブ連載差別表現  安倍政権の差別主義政策、トランプ勝利で露骨に

 

■トランプと仲良く突き進む「自由・民主主義・基本的人権・法の支配」の破壊

 

  2016年11月20日、アメリカ大統領で、人種差別、宗教差別、女性差別的言辞をまきちらし、ヒンシュクをかい、品格をうたがわれていたドナルド・トランプが、接戦の末、大統領にえらばれ、世界に衝撃がはしった。

 

 今年2月9日、安倍首相はトランプ大統領と2度目の首脳会談をおこなうため訪米。目的は安倍首相がつねづねお題目のように唱えている「自由・民主主義・基本的人権・法の支配などの普遍的価値」をトランプ大統領と確認しあうことにあり、そして会談は成功裏に終わった、と誇らしげに発表された。

 事実はどうか。

 

 議会を無視し、移民・難民の排斥などの大統領令を発動する政治姿勢は「民主主義」ではないし、特定のイスラム教国を標的に入国を禁止するのは「普遍的価値」である「基本的人権」の侵害であり、「自由」の制限である。さらに大統領令を執行禁止にした裁判所を罵倒するのは「法の支配」に対する暴挙であろう。

 

 

■第2次安倍政権下で頻発するヘイトスピーチ

 

 安倍内閣で民意を無視して強行された特定秘密保護法、安保関連法制、そして沖縄海兵隊の辺野古への強制移転、権力濫用により無法地帯と化した高江のヘリパット基地建設、さらに共謀罪、緊急事態法の成立をもくろむ安倍首相。

 

 今回の首脳会談であきらかになったのは「自由の抑圧、民主主義の破壊、基本的人権の侵害、法の支配の無視」という共通の価値観で、両首脳が深く結びついていることである。

 

 アメリカ国内ではトランプ政権誕生以来、人種差別、イスラム差別などが激しさをましていると報道されている。

 日本はどうか。日本社会に差別・排外主義が蠢動(しゅんどう)をはじめたのは2006年9月の第一次安倍政権成立と時期を同じくしている(レイシスト団体「在特会」設立は同年12月)。以降、それまでのネット空間から公然とリアル空間で、差別と排外主義的蛮行がくりかえされてきた(2009年京都朝鮮初級学校襲撃事件など)。

 

 そして第二次安倍政権発足を待っていたかのように、路上での醜悪なヘイトスピーチが頻発するようになる(昨年6月の「ヘイトスピーチ対策法」成立とカウンター行動によりヘイトデモは減少している)。

 

 

■相模原障害者殺傷事件

 

 昨年7月26日未明、神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」で障害者19人が殺害され、27人が重傷を負うという戦慄すべき凶悪事件がおきた。

 

 かつてこの施設の職員だった容疑者の植松聖は、重度知的障害者の殺害を“正義”とする目的意識と計画性をもって凶行におよんでいる。

 

「障害者は迷惑だ、税金がかかりすぎる、生きている価値がない」ので、社会のため、国の政策のため「安楽死」させるしかない、と大島衆議院議長あての手紙に犯行動機をあきらかにしている。

 

 日本社会に蔓延する、新自由主義を信奉する経済合理性的価値観・社会観は、費用(税金)のかかる社会福祉をきりすてるばかりか、その対象者に憎悪さえいだき、今回のようなヘイトクライム(差別的憎悪犯罪)を惹き起こす要因となる。

 

 この凶行の矛先は、いま在日韓国朝鮮人、アイヌ民族、琉球民族、被差別部落そして「生活保護受給者」に突きつけられている。

 

 相模原障害者殺傷事件の背後には、差別・排外主義のヘイトスピーチが蔓延している社会状況がある。植松容疑者がフォローしていたツイッターには多くの札付きの差別排外主義者の名前があったが、百田尚樹の名があったことは、とくに記しておきたい。

 

 

■「土人」「シナ人」発言、遺憾から容認へ 政府姿勢の変化

 

 日本社会を震撼させた障害者殺傷事件から2か月余りたった昨年10月18日、高江のヘリパット建設現場で抗議行動をしている沖縄住民にむかって、「土人」「シナ人」という耳を疑うような差別的暴言が、公権力の大阪府警機動隊員から投げつけられた。

 

 この差別的暴言の扱いをめぐって、差別排外主義的風潮に、質的な変化が起きたことがあきらかになった。

当初、金田法務大臣や菅官房長官は「不適切で許すまじき」発言と、遺憾の意を表明していた。日本維新の会代表で大阪府の松井一郎知事は「出張ご苦労様」などと、機動隊員をかばう発言をしていたが、大阪府警本部は暴言を吐いた隊員2名に、軽いとはいえ懲戒処分を科した。

 

 一方で、鶴保沖縄担当相は一貫して「土人」発言を「差別発言と断定できない」とひらきなおり、国会答弁でも同様の発言をくり返していた。

 

 ところが11月22日、政府は一転して鶴保担当相の発言を閣議決定で容認するに至った。

この政府の姿勢の変化の根底に、沖縄に対する差別意識の先鋭化がある。

 

 

■「ニュース女子」デマ報道の背景

 

 そして2017年新春を迎えたばかりの1月2日、東京MXテレビ「ニュース女子」が「沖縄基地反対派はいま」と題し、ヘリパット基地建設反対運動をろくに取材もせず悪意をもって取りあげた。

「反対派は職業的で日当をもらっている」「韓国人がなぜ反対運動に参加するのか」など聞くに堪えない嘘とデマ、差別と偏見に満ちた内容だった。

 

 この番組は、名指しで中傷をうけた「のりこえネット」の辛淑玉さんの訴えなどもありBPO審議対象となったが、このような一線を越えた醜悪な番組を、公然と公共電波にのせたことの犯罪性と差別性は徹底的に糾弾されてしかるべきだ。しかし、東京MXテレビは反省するどころか、司会者の東京新聞論説副主幹・長谷川幸洋ともども居直っている。

 

 現下、沖縄にたいする構造的差別のおもな内容が、押し付けられた膨大な米軍基地の存在であり、おもな特徴は、「土人」「シナ人」発言に象徴される琉球民族差別であることは、言うまでもない。この沖縄にたいする差別は、日本における在日韓国・朝鮮人差別、障害者差別、アイヌ民族差別、部落差別などあらゆる差別と地続きである。

 

 

 以下、3月3日付『琉球新報』に掲載した記事内容を引用させていただく。

 

琉球新報3月掲載記事

琉球新報2017年3月3日

 

 

 

■沖縄ヘイトの底流にあるもの

 

1945年、沖縄戦終結間近の6月6日、

「沖縄県民カク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と大本営に打電し自決した大田実少将の“美談”は、「本土」でもよく知られている。

 

もう一つあまり知られていない電報がある。同年6月21日付で大本営から守備隊司令官牛島満中将宛てに送られた電報だ。

「松代はほぼ完成する。貴軍の忠誠に感謝する」という内容だった。

受けとった牛島中将はその2日後に自決し、その日はいま沖縄慰霊の日となっている。

 

「松代」とは米軍との本土決戦に備え、大本営を東京から信州松代に移し、巨大な地下壕に造られた松代大本営のこと。この突貫工事には7千名を越える朝鮮人労働者が徴用され、過酷な強制労働により多くの犠牲者を出しているが、その全容は未だ解明されていない。

 

先の大本営電文からは、軍民合わせ19万人におよぶ戦死者を出し苛烈をきわめた沖縄の地上戦が、この松代大本営を完成させるための時間かせぎであり、沖縄が本土の“捨て石”にされたことが読みとれる。

 

なぜこのような残酷な軍事戦略を遂行しえたのか。それは沖縄にたいする植民地的差別意識ぬきには語れないが、私自身、それがわかるまでには少しばかり時間を要した。

 

 

■「本土」的目線で見えなかった沖縄差別

 

私が沖縄とはじめて向き合ったのは、70年安保と共にあった沖縄返還運動からだが、その時の合言葉は〈祖国復帰運動〉としての「沖縄を返せ」であり、沖縄差別という問題意識は持ちえなかった。

 

その後、部落解放運動にとりくむ中でも、アイヌや在日コリアンの民族差別とは少し位相が違うという認識で、沖縄問題の根本には米軍基地の存在があり、その撤去こそが問題解決への道であると単純に考えていた。しかし、普天間基地移転の「最低でも県外」が否定され、県民の意志と願いを踏みにじり、辺野古移設が強行されるにおよんで、膨大な米軍基地の存在は、日本の中央政府の沖縄にたいする差別政策の結果であることを実感した。

 

 

■「暴言容認と沖縄への弾圧は連動している

 

今年1月2日、東京MXテレビ「ニュース女子」が基地建設反対運動をろくに取材もせず悪意をもって取りあげた。

この番組はBPOの審議対象となっているが、一線を越えた醜悪な番組を公然と公共電波に乗せたことの犯罪性と差別性は徹底的に糾弾されるべきだ。このような番組が放送された背景には、「土人」という差別的暴言をめぐる政府見解の変更があるのではないかと思っている。

 

昨年10月、高江のヘリパット建設現場で抗議行動をしていた住民に、「土人」「シナ人」という耳を疑うような差別的暴言が、公権力の大阪府警機動隊員から投げつけられた。

 

「土人」という差別語は、沖縄にたいする中央政府の植民地的差別を表象する言葉であり、1879年の琉球処分以降の沖縄差別の歴史と現実が塗りこめられた言葉だ。

 

当初、菅官房長官は「不適切で許すまじき」発言だと遺憾の意を表明し、大阪府警本部は暴言を吐いた2名に懲戒処分を科した。ところが、鶴保沖縄担当相は「土人」発言を「差別発言と断定できない」と開き直り、国会でもくり返し答弁し野党から追及されていたが、11月18日、政府は一転して、鶴保担当相の発言を閣議決定で容認するに至った。

 

安倍政権が急変した要因は何か。

 

一つには、人種・性・宗教(イスラム)差別など差別的言辞をまきちらし、PC(ポリティカル・コレクトネス/言葉に含まれる差別的要素を改革する運動)をあざ笑うトランプのアメリカ大統領当選がある。差別排外主義を煽るトランプの政治姿勢を評価する安倍首相は、その当選後に態度を一変させた。

 

さらに、沖縄への政治的抑圧の激化がある。

基地反対運動のリーダー山城博治さんら3名の違法かつ異常な逮捕・長期拘留は、戦前の治安維持法下の予防拘禁を思わせる。

機動隊員の暴言を容認する流れと、基地反対運動にたいする強権的弾圧は連動している。

 

 

沖縄が直面している厳しい現実を前に、「本土」も徐々に無関心から抜け出しつつある。

在日コリアンなどへのヘイトスピーチに抗議する人々が、沖縄差別にも目をひらき、沖縄に振り下ろされている剥きだしの権力の横暴に怒りの声をあげ、行動に移している。

 

昨年12月、高江のヘリパット建設現場で座り込み抗議行動に参加したときに思い出したことがある。

 

なぜヘイトスピーチ反対行動(カウンター)に参加しているのか?と聞かれ、「『朝鮮人を殺せ』などの発言は、人として、人間として許せないでしょう」と語る仲間の姿だった。かれらは、差別を、政治的イデオロギーや理屈ではなく、直観と感情で見抜き、自立的に沖縄に向かっている。「人として許せない」と語った仲間はいま、那覇拘置所で、次の闘いにそなえ充電している。

 

差別を許さない固い絆で、「本土」と沖縄は、結ばれている。

 

 

 

 

| バックナンバー2017 |
第191回「部落差別解消推進法」は闘いの武器になるか

 

 

 

■法案名に「部落差別」が入れば意義ある法律か

 

 

 2016年12月、自民・公明・民進3党共同提出の「部落差別解消推進法」が参議院本会議で可決成立した。

 

 法律は第1条から6条までの短いもので、その2条〈基本理念〉で、基本的人権が尊重されるべきとの理念にのっとり「部落差別を解消する必要性に対する国民1人ひとりの理解を深めることにより部落差別のない社会を実現すること」を目的としていると書かれている。

 

 この法案を推進してきた部落解放同盟中央本部は、初めて「部落差別」という言葉が入った意義ある法律だ、と手放しで自画自賛している。はたして本当にそうか?まったくの茶番である。

 

 

 

(二階俊博の自民党幹事長就任などを祝うごく内輪の会。鏡割りのおかげで部落差別解消推進法成立? 写真右から3人目・二階俊博自民党幹事長、4人目・組坂繁之解放同盟委員長 2016年9月25日)

 

 

 まず法案成立の背景を明らかにしておこう。

 自民党安倍政権下で遅々として進まない国内差別人権問題に対し、直近では2014年7月の国連自由権規約委員会及び8月の国連人種差別撤廃委員会から厳しい勧告が発せられている。

 

 さらに、2014年にIOCがオリンピック開催都市契約に差別禁止条項を追加したこともあり、2020年東京オリンピック開催にむけ早急に国内における差別・人権問題に一定の法整備を迫られる中、障害者差別・在日韓国朝鮮人差別・部落差別・アイヌ民族差別・LGBT差別などの法律制定に向け急速に動き始めていた。

 

 とくに、2016年4月に施行された障害者差別「解消法」は、国連障害者権利条約(2006年)を受け、障害当事者が法案制定過程の政策委員会・政府機関に多数かかわり、それを障害者団体の運動が支えるかたちで実現した。

 

当初、「障害者差別禁止法」だったのが、障害者団体側の意向を踏みにじり、強引に「解消法」と名称は変更された経緯がある。しかし、名より実をとることで、不充分点はあるものの、障害者差別撤廃に画期をなす法律となった。

 

 

■社会運動で闘い取られたヘイトスピーチ対策法

 

 

 そして、月には在日韓国・朝鮮人など日本に住む外国人に対する排外的なヘイトスピーチに対し、多々問題点はあるものの(*本連載186回参照)、ヘイトスピーチ対策法が成立した。

 

 この法律が制定される前段で、当事者およびカウンターの人々による裁判闘争の中で、「人種差別撤廃条約第1条第1項のいう人種差別」に該当する、との判決を克ちとっている。(京都地裁・大阪高裁。2014年12月最高裁がこれを認定した。)

 

 ヘイトスピーチ対策法は、国連人権機関からの圧力を背景に、ヘイトデモ現場で身体を張って闘ってきた当事者・カウンター・学者・文化人の社会運動が、国会内での有田芳生議員らの「人種差別撤廃施策推進法」と連動した運動が生みだした法律である。

 

 そして、アイヌ民族差別撤廃も、アイヌ当事者も多数参加して内閣官房に設けられた「アイヌ政策推進会議」が開かれており、早晩、法制定にむけて動きはじめるだろう。

 

 いっぽうで、LGBT差別撤廃は停滞している。稲田朋美政調会長(当時)の肝いりで、自民党内に小委員会が作られたものの、伝統的家族制度を尊重する党内の反対に押され、ペンディングとなっている。

 

 以上見てきたように、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ規制法と、いま論議されているアイヌ民族の権利確立、さらにオリンピック憲章をはじめ、「性的指向」による差別禁止を求める国際的圧力によるLGBT差別禁止などの、いわゆる人権関連法案は、2020年のオリンピック・パラリンピック開催前には成立する可能性が高い。

 

 

■「差別はいけません」――道徳訓示レベルの条文内容

 

 では「部落差別解消推進法」は、どのような背景や「制定要求運動」の中から出されてきたのか。

 

 きっかけは2015年11月、東京平河町で開かれた和歌山県人権フォーラムで、稲田朋美自民党政調会長(当時)が記念講演し、ここで部落差別を個別法として法整備することに前向きな姿勢を示し、二階総務会長(当時)のイニシャチブの下、自民党内に部落問題に関する小委員会が設置されたことに始まる。

 

 そして20165月、突然、与党案「部落差別解消推進法案」として提出されたのである。

 

 与党案は、一読して具体性に乏しい。差別禁止規定も罰則規定もない。

 ありきたりの「差別はいけません」的な道徳訓示レベルの文言が並ぶのみである。

 

 

■「国と地方公共団体の責務」がない「部落差別解消推進法」

 

 部落差別が許されない社会悪であることは、同和対策審議会答申(1965年)が、半世紀前に、はっきりと述べている。

 

「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。〈中略〉その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」

 

 「同和問題の解決は国の責務である」と、高らかに謳いあげ、この答申に基づいて1969年に「同和対策特別措置法」が成立し、2002年まで部落差別撤廃のとりくみがなされてきた。

 

 そして、特別措置法の失効を前に、200011月、人権教育推進啓発法が成立した。

 

 この「啓発法」は、その目的を第1条で、憲法第14条をもとに、「社会的身分・門地・人種・信条または性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状」に対し、「国・地方公共団体と国民の責務」を明らかにし、「必要な措置を定め、もって人権の推進に資することを目的とする」と、明確にのべている。

 

 この啓発法では、「国と地方公共団体の責務」として、

 「人権教育及び啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する」とし、その上で 「財政上の措置」(第9条)を講ずることを、明記している。

 

 ところが、今回の「解消推進法」では、それが「情報提供と助言の責務」に後退している。

 

 たとえば、第条「国および地方公共団体の責務」では、

 

「国は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関する施策を推進するために必要な情報の提供、指導および助言を行う責務を有する」

 

「2.地方公共団体は〈中略〉その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする

 

となっている。(下線筆者)

 

 つまり、国は、地方公共団体に対し、「情報の提供、指導および助言を行う責務を有し」、地方公共団体は「施策を講ずるよう努める」という努力目標に、とどまっているわけである。

 

 

■解放運動の生命線「糾弾権」を封じることが狙い

 

 

 では、なぜ今、このような無内容な法案が、自民党主導で提案されたのだろうか。

 

 それを象徴したのが、昨年12、参議院法務委員会で行われた参考人質疑だった。

 

 なんと解放同盟の中央書記長は、自民党の推薦を受けての出席だった。

 そこでの発言で強調していたのは、「我々は事業法を求めているのではない」ということだった。

 つまり、「財政上の措置」をハナから放棄しているのである。法案の空念仏性が益々明らかにされている。

 

 さらに憂慮すべきは、この法案の付帯決議だ。そこには次のように書かれている。

 

1.部落差別のない社会の実現に向けては 〈中略〉 過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずることも併せて、総合的に施策を実施する」

 

 

 これは事実上、部落解放運動の“生命線”と言われてきた糾弾を否定するということであり、つまり、この法案の狙いは、部落解放運動の命脈を断ち、体制内に取り込むところにある。

 

 法律制定をめざす闘いの過程は、めざすべき法律の内容を規定(反映)する。

 

 じっさい、この法案を提案した自民党議員は、衆議院法務委員会で、臆面もなく、つぎのように言い放っている。

 

「この法律は理念法に留めた。したがって、財政の援助あるいは処罰はない。ご懸念(同和対策事業の復活や確認・糾弾の根拠になる)されたような糾弾、これも一切ないように心掛けて条文を作った」

 

 

■事実上の部落解放運動抑圧法

 

 

 突然ふって沸いたような「部落差別解消推進法」は、その背景を見れば明らかなように、自民党主導で、しかも札付きの差別者・稲田朋美現防衛大臣などを前面に出し、現自民党幹事長の二階俊博が音頭をとって作り上げた、部落差別撤廃運動にまったく役立たない、部落解放運動抑圧法と言ってよい。

 

 そして、罰則規定や救済規定のない単なる理念法というだけでなく、この法律の制定によって、部落解放運動の生命線である糾弾を封じることを直接の目的として自民党から提出された、という危険性をもつ。

 

 法案内容について、反対の共産党を除き、野党民進党からの修正案も出された気配もないし、すり合わせた形跡もない。自民党二階派と解放同盟中央の一部幹部との密室での談合で成立したと言ってよい。(自民党の関係組織である自由同和会ですら法案成立は失敗だったとしている)。

 

 解放同盟中央は、解放運動をしているというアリバイ作りにこの法案を利用しているに過ぎず、実体的に安倍政権に取り込まれている。(あれほど人権擁護法案など人権関係法案に強固に反対していた安倍首相も、この法案については直に了承している。)

 

 部落差別を許さない法制定をめざす闘いの過程は、成立した法の内容に反映される。

 

 法制定を推進してきた部落解放同盟中央本部の存在意義が問われている。

 

| バックナンバー2017 |
<< | 2/2PAGES |