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第195回 悔い改めないレイシスト・麻生太郎

 

■ヒトラーの行為は悪いが動機は正しい?

 

またしてもである。

8月29日、自民党の麻生太郎副総理兼財務相が派閥の研修会で講演し、次のように発言した。

 

「少なくとも(政治家になる)動機は問わない。結果が大事だ。

 何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」

 

発言の翌日、「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾」と釈明したものの、謝罪はしていない。今回で公(おおやけ)には二度目となるナチス・ドイツ肯定発言に、政治家としての見識が疑われ、抗議と批判の声が、日本のみならず世界中で沸き起こっている。

 

講演での発言を素直に読めば、ホロコーストはダメだがヒトラーの動機は正しかった、と言っていることに疑いの余地はない。

 

 

■4年前のヒトラー礼賛発言

 

麻生太郎によるナチス讃美・ヒトラー礼賛の発言は、今回が初めてではない。

 

2013年7月29日には、都内で開かれた国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)の月例研究会で、

 

「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。

 だれも気づかなかった。あの手口学んだらどうかね」

 

と発言し、歴史認識の誤謬(ごびゅう)とともに「ナチスから学ぶ価値ある手口は一切ない」と、サイモン・ウィーゼンタールをはじめ、国際的な批判を浴びた。それからまだ4年しか経っていない。

 

 

■高須克弥のヒトラー称賛・ホロコースト否定

 

最近では、高須クリニックの院長・高須克弥がヒトラーを称賛し、ホロコーストは捏造(ねつぞう)だとの戯言(ざれごと)をツイッター上で吐き、徹底批判されているが、撤回も謝罪もせずに居直っている。

 

 この高須克弥の件に関しては、「社長ブログ ゲジゲジ日記」(2017年8月25日)ですでに批判したが、ナチス・ヒトラーの行為を評価あるいは無批判に真似する言動一切が犯罪なのだということを強調した。

 

ネット上で、高須クリニック院長・高須克弥のヒットラー礼賛、ホロコースト否定発言に批判が集中、炎上している。今年8月5日にベルリンの連邦議会議事堂前で、ナチス式の敬礼をした中国人観光客2人が逮捕されている。日本に包括的な差別禁止法があれば、高須克弥は社会的処罰を受けるだろう。

 

ホロコースト否定は、1995年の文藝春秋社発行『マルコポーロ』廃刊事件で、それが犯罪行為であることがすでに日本でも明らかにされている。ちなみにその時の『マルコポーロ』編集長は花田紀凱氏で、即解任されている。

 

なぜ今ごろ高須克弥がアホなことを言い出したのか、サイモン・ウィーゼンタール・センターは、直接の抗議糾弾活動を日本に乗り込んで行うべきだろう。欅坂48の時とは悪質さのレベルが違う。

 

第二次世界大戦での、ユダヤ人600万人、ロマ人(賤称・ジプシー) 60万人、同性愛者と障害者20万人を虐殺した、ナチス・ドイツの人類に対する犯罪への痛烈な反省から、1948年、世界人権宣言が発せられた。その思想と精神を具体化したのが、国際人権規約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害者の権利条約などの、一連の人権条約なのだ。

 

すべての人権条約は、ホロコーストの反省の上に成り立っている。日本は一部留保しつつも、多くの人権条約を批准しているが、条約の内容に見合った国内法をキチンと整備しているわけではない。

とくに、国連での可決から30年経って1995年に批准した人種差別撤廃条約に関しては、昨年不十分ながらも成立した「ヘイトスピーチ対策法」以外、国内の差別禁止関連法はまったく成立していない。高須克弥の暴言は、この国内人権法の不備がもたらしている。(ゲジゲジ日記2017/8/25) 

 

 

■いくつかの事件から

 

ナチス・ヒトラーに関係し、社会問題となった主なケースを少し掲げておこう (*『最新差別語・不快語』参照)。

 

 

○2011年、バンド「気志團」がナチス親衛隊(SS)の制服を着てテレビ出演。 サイモン・ヴィーゼンタールに抗議され、謝罪。

 

○2011年、フランスの高級服飾ブランド、クリスチャン・ディオールのデザイナー、ジョン・ガリアーノ氏が、パリのユダヤ系住民が多い地区のカフェで酒に酔い、「ヒトラーが大好きだ。お前たちのような奴らは死んでいたかもしれない」と暴言を吐く。ガリアーノ氏はC・ディオールを解雇され、フランスの人種差別禁止法によって罰金65万円と禁固6ヶ月の執行猶予付き有罪判決。その後レジョン・ドヌール勲章をはく奪される。

 

○2014年、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の恐怖を少女の目で描いた『アンネの日記』が、東京都内と横浜市の図書館で相次いで破られる。サイモン・ウィーゼンタールは声明で「事件は偏見と憎悪に満ちた」一部人間の行為と指摘。「ホロコーストで犠牲になったユダヤ人の子ども150万人の中で最も知られた代表であり、その記憶を侮辱する組織的計画」であり、「思想的な動機があるのは明白」と語った。犯人は捕まったものの、警視庁からその後の動静が一切明らかにされていない。

 

○2015年、衣料品スーパー「しまむら」がナチスの国旗ハーケンクロイツ(鉤十字)のマークが入ったペンダントとセットになったタンクトップを販売。批判を受け、販売中止。

 

○東京・大阪など全国各地でおこなわれている人種差別にもとづく排外主義的ヘイトスピーチデモで、旭日旗とともに、ナチスドイツの国旗ハーケンクロイツ(鉤十字)の旗がふられる。2014年7月国連人権規約委員会で、その映像が上映され、委員会は日本政府に対し、差別を煽るすべての宣伝活動を禁止する措置をとるよう、日本政府に勧告。

 

○アイドル集団、欅坂46がハロウィーンコンサートで「ナチス風」軍服と軍帽の衣装で出演。サイモン・ウィーゼンタール・センターが所属会社のソニーミュージックとプロデューサー秋元康に抗議、謝罪を求める。

 

 

■差別政治家をのさばらせるものは

 

 

話をもどす。

麻生太郎が札付きの差別者であることは、元自民党幹事長の野中広務さんが総理候補に名前が挙がったとき、

「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と露骨な差別発言を行っていることからも明らかだ。

 

野中さんは2003年9月、自身最後の自民党総務会の席上で、麻生氏を目の前で糾弾している。

 

2009年1月17日ニューヨークタイムズ紙が、この「麻生の差別発言」について、オバマ大統領誕生と関連して、4ページにわたる大特集を組んでいるが、部落解放同盟中央本部は、一度も麻生に対し、抗議も糾弾もしていない。この事件については『部落解放同盟「糾弾」史』を参照いただきたい。

 

ことナチス・ヒトラー問題にかかわらず、麻生太郎は人種差別者、部落差別者であり、度し難い差別者なのである。

 

なぜこのような差別政治家が、いまだに権力の一員としてのさばっているのだろうか。

 

それは、現在の自民党と安倍政権のものの政治的思想的本質をあからさまに体現しているのが、麻生太郎ということなのだ。トランプ大統領以前の問題である。

 

 

■日本政府も批准する人種差別撤廃条約で処罰すべき

 

 

日本政府も批准する人種差別撤廃条約の第4条は「人種的優越主義に基づく差別および煽動の禁止」を定義している。そのC項にはつぎのようにある。

 

C項]国又は地方の公権力又は公益団体が人種差別を助長し又は煽動することを許さない。

 

このC項を日本政府は批准している。ちなみに差別的憎悪煽動=ヘイトスピーチを禁止したこの4条の[a項][b項]を日本政府は留保し、批准していない。

 

ヒトラーの「動機は正しかった」という麻生の発言は、この人種差別撤廃条約第4条C項に照らしても、責任追及を免れない。これが今日の差別・人権問題の国際基準なのだ。

 

 

■日本と世界で同時進行するレイシズムとファシズム

 

今回の麻生発言の少し前には、小池百合子都知事が1923年9月の関東大震災時の、6千人にのぼる朝鮮人虐殺を慰霊する追悼集会への追悼文を、慣例を破り見送りを決定している。ついで墨田区長も、その動きに追随している。

 

全般的な歴史修正主義とファシズム、レイシズム讃美が、日本と世界で、同時に跳梁跋扈している。

 

2013年の件とともに、今回の麻生の「ヒトラーの動機は正しかった」発言をサイモン・ウィーゼンタールなど国際的な抗議運動と連携し、かつ国会内でもとりあげ、徹底糾弾すべきだ。

 

最後に〈ウェブ連載差別表現 第100回 「麻生副総理の『ナチス正当化』発言は国際的非難を免れない」を再録しておきたい。

 

 

「麻生副総理の『ナチス正当化』発言は国際的非難を免れない」

 

【連載差別表現・第100回より】(2014年8月)

 

夏期休暇中、とんでもない発言を、インターネットを通じて知った。麻生太郎副総理の憲法改正にかかわっての「ナチス発言」である。

■「ナチス正当化」発言に国際的非難


 麻生は7月29日、都内で開かれた国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)の月例研究会で、次のように発言したという。

 

「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。」

 

 発言内容が報道されると同時に、諸外国、とくに韓国、中国を始めアジア諸国から批判の声が上がった。さらに、アメリカのユダヤ人人権団体として名高いサイモン・ウィーゼンタール・センターは、すぐさま反応し、次のように批判声明を出し、「真意を明確に説明せよ」と求めている。(報じたのは8月1日付『朝日新聞』)

 

「どんな手口をナチスから学ぶ価値があるのか。ナチス・ドイツの台頭が世界を第2次世界大戦の恐怖に陥れたことを麻生氏は忘れたのか」

「また、ドイツの週刊紙ツァイト(電子版)は31日、『日本の財務相がナチスの改革を手本に』という見出しで発言を伝えた。同センターなどの反応を伝え、『ナチスの時代を肯定する発言で国際的な怒りを買った』とした」(2014年8月1日『朝日新聞』)

 

 

■麻生を徹底糺弾しない日本の政治家の不見識


 筆者は、副総理と財務相の辞任にとどまらず、自身の議員辞職を含め、安倍内閣の存亡にかかわる重大かつ深刻な政治的舌禍事件と思い、成り行きを注視していた。
 

 麻生は国際的な批判に狼狽し、8月1日、「(発言が)私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ」として、発言を撤回した。

 

しかし、発言を撤回したからといって、発言の持つ政治的価値観と歴史認識が消えたわけではない。

 

「私の真意と異なり、誤解を招いた」と、麻生は弁解しているが、ナチス的手法を礼賛する麻生の真意は十二分に伝わっているのであり、表面的な「遺憾」表明などなんの意味もない。


 新聞各紙も、『毎日新聞』の8月2日付社説をはじめとして、単にうわべだけの撤回ではなく、発言の背後にある歴史認識と政治思想について、徹底批判している。


 しかし、発言に対する弾劾が期待された臨時国会では、圧倒的与党の自民党に、「ナチス発言の審議要求を一蹴」され、その後、民主党をはじめとする野党が、この問題で、強い行動を起こした形跡はない。


 さらには野党のひとつ、日本維新の会共同代表の橋下徹氏は、麻生の暴言について、次のように述べた。

 

「ナチス・ドイツを正当化したような、そんな趣旨では全くない。国語力があれば、そんなことはすぐ分かりますよ」
「むしろ、ナチス・ドイツを否定している趣旨なわけで。ちょっと度のきつかったブラックジョークというところもあるんじゃないですか」
記者に「国際社会ではナチスにたとえること自体が問題視される」と突っ込まれても、
「政治家だから、こういう批判が出るんでしょうね。エンターテインメントの世界とかではいくらでもありますよ」

 (共に2014年8月2日『日刊ゲンダイ』)

 

 橋下氏はこのように平然と応えている。なんという軽薄さ、なんという鈍感さであろう。
 差別表現の大半が、被差別マイノリティ集団を悪いもの、否定的なものの“喩え(たとえ)”として、引き合いに出されていることは、すでに周知の事実である。

 

“喩え”でナチスの手法を正当化することは、ユダヤ人を始めとするホロコーストを容認し、犠牲者を冒涜する国際的な暴言であることが、まったくわかっていない。
 

 橋下氏の言をよしとするなら、2010年12月、イギリスの公共放送局BBCが、お笑いクイズ番組内で広島と長崎で2度被爆した、山口疆(つとむ)さんを「世界一運が悪い男」などと、ジョーク交じりに紹介したことを、「ブラックジョーク」として済ますべきであり、在英日本大使館が抗議したことも、過剰反応ということになる。


 このとき、山口さんの遺族で長女の山崎年子さんは、「(父のことを)核保有国の英国に『運が悪かった』で片づけられたくない。家族のなかでは2度の被爆を『運が悪い』と笑いながら話したことはあるが、むごい記憶や後遺症を乗り越えるために笑い話にしたのであり、人(他者)から笑われるのは意味が違う」と憤っている。「BBCはぜひ、父の記録映画を見て被爆者がどんな思いで活動しているか知り、放送してほしい」(朝日新聞2011年1月22日)と、当事者性を抜きにしてジョークを語るおろかさを指摘している。 「慰安婦」発言の時もそうだが、橋下氏に決定的に欠けているのは、被害者の怒りや悲しみ、苦しみの感情に対する配慮であり、当事者の心情を忖度する感性の欠如である。



■日本の“常識”は世界の“非常識”


 話をもどすが、なぜ日本では、これほどあからさまなナチスの正当化や、ホロコースト被害者であるユダヤ人(ロマ、同性愛者、精神障害者)に対する配慮が欠けているのであろうか。
 数年前、出版・人権差別問題懇談会で、ニューヨーク市立大学の霍見芳浩(つるみよしひろ)教授を招いて講演を行ってもらったことがある。

 

話の冒頭で、教授は、講演会場の如水会館に来る前に寄った神保町の大手書店について話をした。その大手書店には、ユダヤ人陰謀論をメインにした棚があり、欧米ではありえないその光景に霍見教授は非常に驚いたという。同時に、日本人のユダヤ人問題、ひいては、国際的な人権問題についての認識の浅さと低さに時間を割いて語った。
 教授いわく、もし欧米の書店が、この神保町にある大手書店のような棚を作ったとすれば、即座に営業停止に追い込まれるであろう。

 

 日本では常識として「通用」しても、世界の人権水準からすれば、それは単に日本の非常識を露呈しているに過ぎず、国際的批難はまぬがれない。実際に、ドイツでは、ナチスを肯定するような発言を公然とした場合、違法行為となり、懲役や罰金が科される。
 今日の世界の人権規範の基準は、いうまでもなく第二次世界大戦の痛烈な反省から生まれた、世界人権宣言に体現されている。
 その目指す方向・内容・特徴を具体化したのが、国際人権規約(1976年発効、日本は1979
年批准)、人種差別撤廃条約(1963年採択、日本は1995年加入)を始め、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、そして、障害者の権利宣言など、23にものぼる国連の人権条約に具現化されているのである。

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